2015年6月11日

伝統工芸品の場で伝版®を活用いただきました

ご縁を耕し、多彩な視点を“ひきだし、ひもとき、くみたてる”

気持ちや考えをひきだし、ひもとき、くみたてるためのグラフィックシート「伝版®」。
今回は伝統工芸品に関わる場での活用例をご紹介します。

今年3月、福島県の伝統工芸品「大堀相馬焼」に関わる24名様が東京・銀座に集いました。
「大堀相馬焼」は、福島県の浪江町(なみえまち)に元禄時代から300年続く、経済産業省指定の伝統工芸品(陶器)です。東日本大震災に伴い生じた原発事故で、産地は立入禁止区域に。
生産の拠点・原材料となる土・既存の販売チャネルを失いました。

 “これまでの土は使うことができない”
 “これまでの土地では作ることができない”
 “これまでのような製作のための共同体はない”
 “これまでのような販売先はない”

伝版®「木」を使って“ご縁を耕す”
ゼロ状態から再起への挑戦です。
窯元の1つ《松永窯》の4代目松永武士さんは発想を転換し「これまで通りは不可能」な現状を、「これまで以上」を目指す機会ととらえ、様々な分野の専門家を巻き込み、3年にわたりチャレンジを重ねてきました。成果の1つ、
誕生したブランド「KACHI-UMA」では、ファッションデザイナーやインテリアデザイナー、イラストレーター、建築家、テキスタイルデザイナーなど様々な分野・10人のクリエイターの協力を得て、今まで大堀相馬焼を知らなかった都市部や海外の人々にも選ばれる成果を挙げました。


この日は東日本大震災から4年の節目に「持続可能な発展への報告&発表会」と題し、それぞれの
専門の立場から力を貸してこられた皆さんが、松永さんの呼びかけで初めて一堂に会しました。

24名様のお顔ぶれはなんとも多彩です。

《使い手》湯呑みや酒器、お皿を買い、使うことで応援してきた方
《届け手》商品が“販売”されるよう協働してきた流通の方
《伝え手》再生への取り組みを人々に周知したマスメディアの方
《再生の仕組みの支え手》情報/人材/資金調達等の助言をした行政や中間支援団体の方
《作り手》再生への新ブランドの1つ“KACHI-UMA”に協力したクリエイターの方


どなたも4代目窯元の松永さんとは懇意ながら日頃は異なるフィールドにおられ、皆さん同士の多くは初対面です。『このひととき“ありがとうございました”“よかったね”と感謝・祝福するに止まらず、多彩な皆さんで創造的な交流を楽しんでいただきたい!』との松永さんの願いからワークセッションに伝版®を活用いただくことに。楽伝理事の柴山と山本もお手伝いさせていただきました。

さて、会の半ばCOOL JAPANIDEA BOOSTと名付けられた、大堀相馬焼のこれからを拓くアイディアを探索するセッションが始まりました。

◆伝版®「木」で、ご縁を耕す
セッションは90分間。多彩な皆さんの“ご縁を耕す”ワークからスタートです!4つのグループでまずは各自、伝版®「木」に4つのことがら(自分の好きなこと・大切にしていること・これから挑戦したいこと・これからの大堀相馬焼に期待すること)で自分を表現していただきます。

アイディアたちを伝版®「花」へ
続いて「木」を共有しながらグループ交流へ。どのグループもお互いにあまりよく知らないフィールドで活動されているお顔ぶれ。自己紹介も「話せば長い話」になるところですが、自分のありようを「木」に表して語ることで 、職務や活動内容に止まらず、信条や想いが短時間で豊かに共有されます。

◆多様な視点を引き出し、
 伝版®「花」でひもとき、くみたてる
グループの温度が一気に上がったところで、テーブルには大きな伝版®「花」が登場!
“しかけづくりのネタさがし”と題し、いよいよ大堀相馬焼のこれからを拓くアイディア創出ワークです。

 “これまでの延長線上で考えるのでなく、発想の転換がいるよね。ちなみにファッションでね、
   歴史に残るトレンドが誕生したときって・・・”
 “やっぱり「お寺」が肝心じゃないかなぁ・・・”
 “そういえば島根の酒造メーカーさんの話なんですけどね・・・”
 “日本から海外なのかなぁ。海外から日本は?”
 “卸として様々な産地を訪ねていますが、職人さんが‘手びきの’ろくろで一つひとつ作って量産
    するって稀少で本当にすごいこと!でもその価値、意外と自覚されていない・・・”
 “たとえばドバイの見本市って・・・”
なるほど、あっちとこっちのアイディアを
つなげるとおもしろい?!

 

異なる専門フィールドに身をおくメンバーの集まりならでは!思いがけない発想、情報、知見が飛び交い、なんとも刺激的です。
あちらこちらでどっと笑い声も。

一見脈絡がなさそうなことがらも、とりあえず伝版®「花」の6枚の花弁や余白におとしておきます。
だんだん、あちらの花弁とこちらの花弁につながりが見えたり、違いがはっきりしたり。共通するキーワードが浮かぶこともあります。

“しかけづくりのネタ”が育ったのちは、アイディア実現に向け、皆さんにお力添えいただけることを掘り起こすディスカッションへ。

やがて伝版®「花」には“しかけづくりのネタ”と、実現への手がかりがいろいろに!
各グループが発表するうちにアイディアのヴァリエーションが増し、いろいろな化学反応が今にも生じそうです。そしてなにより、皆さんがとても楽しそうです。
ちなみにセッションを終え、大堀相馬焼のぐい吞みでいただく、浪江町にゆかりの地酒・鈴木酒造さんの磐城壽(いわきことぶき)」もひときわのおいしさでした。
 
松永武士さん・大堀相馬焼《松永窯》4代目窯元のコメント
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中央:松永窯4代目窯元・松永武士さん
“今回集まってくださったのは、大震災からのとても厳しい時期に大堀相馬焼に関わり、それぞれのお立場から多様な専門性を惜しみなく注いでくださった方々です。そのことに深く感謝するとともに、なかなか一堂に会する機会のない皆さまに“つながって”楽しんでいただきながら、さらなるイノベーションをご一緒に模索したかったので、その目的を果たせてとてもうれしく思っています。”

“大堀相馬焼はまだ再生を始めた段階です。「ゼロからの再生」に留まらず「持続可能な発展」を実現するには、国内外の新たな「使い手」を想定し、これからを生きる人々に愛される伝統的工芸品のありようを模索する取り組みが欠かせません。「取り組みを支える人」を育てる仕組みや環境を整えることも大切だと考えています。皆さんと探索した“しかけづくりのネタ”を大いに活用し、実現していきたいです!”
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楽伝は、大堀相馬焼のさらなるチャレンジを引き続き応援していきます。
ところで“なぜ、楽しく伝える・キャリアをつくるネットワーク(楽伝)が伝統工芸品の大堀相馬焼を応援?”と不思議に思われるでしょうか。それについても近く、ひもとかせていただきます!


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