2015年11月26日

「ひとふでんず」ってなに?

“楽しく伝える”コミュニケーションツールです

「人生は短く、芸術は長し」とは古代の賢人ヒポクラテスのことば。
 芸術といって真っ先に思い浮かべるものの1つが「絵」ですが、私ときたら「ちょっとした絵」でいいから描いて、と言われるとドギマギ、絵は苦手だからと後ずさり。古代人よりも人生はずいぶん長くなりそうなのに、今後、絵がうまくなりそうな気配はありません。
でも、「漢字」ならば書けます。パソコンやケータイのない時代から書いていたのですから、機械に頼らずとも今の若い人たちよりは正確に書けるかしら。

そういえば漢字は象形文字。
季節のひとふでんず
「こたつ猫」
“身の回りにある情景を切り取った絵”が漢字の始まりです。それも「芸術的な絵」ではなく「ちょっとした絵」。「山」「川」などの単純な漢字は、どんな絵からできているかがすぐに想像できますね。

漢字を書くことはつまり「ちょっとした絵」を描くこと!そう思うと少しは元気が出てきます。でも所詮それは単なる個人の言い分。漢字を書いても、他人には絵だと思ってもらえず自慢できません。そこで、絵の苦手な私でも描け、かつ少しばかり自慢できるちょっとした絵を作ってみようと思い立ちました。

◆はじまりは「伝図(でんず)」
ところで「ちょっとした絵」のコツは、描いた絵を見た人が、それが何の絵であるかすぐにわかること。わからなければそれを表す漢字を書いていた方がマシです。わかる絵を描くには、誰もが知っているものを対象にして、誰が見ても「ああ、アレの絵ね」と、瞬時にわる簡単なにしなくてはなりません。
とりあえず、そういうものに「伝図(でんず)」という名前をつけ、作りはじめました。ところが、できた「伝図」をいざ描けるようになると、なにやら簡単すぎて自慢にもならず「つまらない!」となってくるのです。
 
「そもそも絵が苦手なのに、そんな贅沢なことを?」ですが、なにせ自分たち自身で「つまらない!」のですから、ここはそのままにせず“絵が苦手な人でも挑戦できて自慢できる絵ってどんなもの?”と考えをめぐらせてみました。

そういえば漢字だって、初めはたいそう複雑だったモチーフが、幾度も幾度も続けて描かれるうちに、だんだんと枝葉が簡略化され、シンプルなラインからなる「漢字」になってきたのでしょう。つ
まり“ひとふでがきのように”描いていたら「漢字」ができた、と。それならば私たちはひとふでがきの「伝図」を作ろう!と思いつきました。
 
◆「ひとふでんず」誕生
たとえシンプルな図柄でも、ひとふでがきにして描いてみると楽しいし、そして、実際に描いてみたものを見せると「えー、これ、ひとふでがきで描いたの?すごーい」と褒められます。
こうして、褒められた勢いにもまかせ、日常のモチーフをひとふでがきにしてくれるデザイナーに「ひとふでんず」の創作を依頼しました。ひとふでで、誰にでもわるちょっとした伝図

「ひとふで」+伝(でん)+図(ず)=「ひとふでんず」
 
を作るという使命を勝手に背負い「ひとふでんず」を創作し、少しずつ世に発表することにしました。

「ひとふでんず」は単純になぞってみるだけで、絵が描けた気分になりますし、単純なものであれば、練習すれば下絵なしで描けるようになります。
「ひとふでんず」をなぞるだけもよし、何回か描いて覚えるのもよし。さらにできた「ひとふでんず」に色を塗ったり、何か別の絵を書き加えたりして世界でたったひとつの作品にするのもよいでしょう。ひとりで描けるようになった「ひとふでんず」を人に見せると、判を押したように相手が驚いてくれて、ちょっと鼻高々な気分になります。
 
◆まだある「ひとふでんず」効果?
これもあれも「ひとふでんず」
ところで、あくまでも経験値としてですが、
「ひとふでんず」には不思議な力が秘められているようです。描いている時には集中力がアップ。簡単なようでいて実は、次にどちらへ進もうかと迷う分岐点では頭を使いますし、大きな「ひとふでんず」と小さな「ひとふでんず」を描くときでは身体の中で使う筋肉が違うようです。
冒頭(写真)でご紹介した「こたつ猫」はシンプルな図柄ですが、こたつの形をしっかりとりつつ、猫やこたつ布団、みかんの曲線にも気を配りたいところ。これが人物の肖像画や風景など、複雑な図柄となればむずかしさは天井知らず。こどももおとなも呼吸を忘れて静まり返る「ひとふでんず」タイムです。

「ひとふでんず」を楽しく描く生活を続けていると、だんだん「ひとふで脳」ができてきます。ふだんの生活で目に入る風景やモノをなんとかひとふでで描けないものかとついチャレンジしてしまう瞬間……。そんなときは「ひとふで脳」が働いているに違いありません(笑)

単純なようで実は奥深い、「ひとふでんず」の世界。ぜひいろいろな場面で楽しんでください。シンプルな造形ですが、意外とパワフルなコミュニケーションツールとなってくれることでしょう。

ちなみにこの「ひとふでんず」前号では「建設業」コミュニティの一端を伝えるモチーフとしての岩手県での仕事ぶりをご紹介しました。このほかにもいろいろなコミュニティ=地域の活性化モチーフとして働いています。

◆大阪・四天王寺で
スイーツにひとふでんず
「四天王寺の五重の塔と亀池」
1400年前の古代には日本で最も栄えた国際交流都市だった四天王寺は、今も地域(ローカル)とグローバルが入り混じった摩訶不思議なパワーにあふれたエリアです。そんなコミュニティらしさを「ひとふでんず」にして発信されています。
 
つい先日は、素敵なスイーツの上に、四天王寺バージョン「ひとふでんず」の1つ「四天王寺の五重の塔と亀池」のチョコレートプレートが(右写真)!
 
四天王寺にちなんだ女子会イベントでのご賞味と相成り、登場するなり「キャー」の歓声を浴びていました。
なんだかすごい、「ひとふでんず」パワーです!

理事長 西道広美 拝

*次号はお待ちかね、2016年度『伝版®ダイアリー』についてのご案内です。
  どうぞお楽しみに!

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