2016年12月26日

キャリアデザイン再考 by 西道広美

VUCCA Worldを生き抜く戦略としてのキャリアデザイン

この一年、社会教育と地域振興を軸に楽伝は試行錯誤し、活動を拡げ、小学生のこどもたちから幅広い世代の社会人まで、さまざまな皆さまとご一緒させていただきました。
 
“キャリアをひらく力を育む”という目的は共通ながら、フィールドは実に多様で異なる企画の一つひとつを通じ、楽伝は“今ここにある時代”と“すでに始まっているこれからの時代*VUCCA Worldブッカ・ワールド)”をさまざまな角度から考察する機会に恵まれたように思います。
*「VUCCA」とは、変化しやすく(Volatile)、把握できず(Uncertain)、混沌とし(Chaotic)、複雑で(Complex)、多義的な(Ambiguous)という5つの言葉の接頭語を合わせた略語。

そうした考察の一部を皆さまと共有させていただきたく、理事長・西道広美が「キャリアデザインの根本=一人ひとりがよりよく生きるための戦略」に立ち返り、ブッカ・ワールドを生き抜く戦略としてのキャリアデザインをテーマに、シリーズにて執筆中です。折しも来る年に想いを巡らす頃、皆さまにご高覧いただければ幸いです。 

◆第一回 キャリアとキャリアデザイン~再考の必要性
キャリアデザインの思想は、世の中がどうあれ、また組織に所属しているかどうかにかかわらず、すべての人に対して、「一人ひとりがよりよく生きる」ために戦略を持つことを促します。すでに始まっているというブッカ・ワールドにおいて、キャリアとキャリアデザインの意味をどうとらえなおすのか ― 我が国のキャリアデザインの現状をふりかえりつつ、我々の視座を明らかにします。
>> 第一回 再考の必要性

◆第二回 起業家に学ぶスキルと多眼・複眼的アプローチ
何がやりたくて、何が可能で、その中で何を軸として持ち続けていくのか。ブッカ・ワールドにおいて、自分と周囲の折り合いをつけていくのは容易ではありません。第二回では、ブッカ・ワールドの先住民である「起業家」のありようにキャリアデザイン視点で学びながら、ブッカ・ワールドを生き抜く術について“多眼・複眼的アプローチ”に着目して考察します。
>> 第二回 起業家に学ぶスキルと多眼的アプローチ

第三回は「キャリア・アンカー再来」をテーマに、新しい年に発信させていただく予定です。

今年もあと数日になりました。折しも本日、楽伝の本拠地・黄色い家の2階ではらくでん式こどもいんぷろ英語ワークショップが開催中。たいそうにぎやかです!この楽しい模様もいずれご報告させていただく予定です。

それでは、みなさま、どうぞよい新年をお迎えください。

◇ご案内
12月28日(水)より2017年1月4日(日)まで楽伝は年末年始のお休みをいただきます。 

*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性と変化あふれる社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。

2016年12月1日

事業所を越えたネットワーキングで、よりよい職場づくりを!

開催報告:介護事業者マネジメント研修

楽伝はこの秋、介護事業所のリーダーの方々を対象とする研修にファシリテータを派遣しました(主催:東京都生活協同組合連合会 以下、東京都生協連)。生活協同組合は、組合員のくらしの改善・向上の実現に向けて、地域・職域・大学・医療・共済・住宅など多様な領域で活動しており、介護事業所を通じたサービスの提供もそのひとつです。生協組合員と地域住民の方々がご利用者です。
1カ月をはさんでの全2回(各2時間)の研修には都内で活動する医療生協、地域生協など、様々な生協から13名の方が参加しました。
 
多くの事業所は地域密着の小規模型で、サービス向上に向けた人材育成・運営のあり方等の課題に、日ごろは個別に取り組んでおられます。しかし地域はちがっても、たとえば、忙しすぎてチーム内のコミュニケーションが十分でなかったり、人手不足やヘルパー高齢化など人材に関する悩みがあったりと、共通する課題はとても多いもの。「課題や悩みにもっとよいアプローチを考えたい」「相談できる他の事業所の仲間がほしい」などの現場からの声を受け“より良いケアの提供に向けた職場づくりに貢献できる人財になる”を目標に、今回の開催となったそうです。
それでは研修の模様をのぞいてみましょう。

◆第1日目「現状を俯瞰する」(9月15日)
ほとんどの参加者が互いに初対面。会場に入る皆さんの様子は日ごろの重責を肩に、ちょっと緊張気味でしょうか。そんなお一人ひとりに楽伝のファシリテータが笑顔でごあいさつします。

今回の大切な目的のひとつは介護事業に携わる生協事業所間のネットワークづくりです。まずはA4サイズの伝版®「花」をつかって相互インタビューを重ねる“楽伝アイスブレーキング”。ていねいな自己紹介ワークからスタートです。皆さんすぐに持ち前のコミュニケーション力を発揮されて、会場の音量・温度とも一気に上がったようです(笑)

第1日目にメインで取り組んだことは「職場の現状を俯瞰してとらえること」。
日ごろは喫緊の課題への対応優先になりがちで、事業所全体としての現状を俯瞰する機会がなかなかないものです。まずは皆さん各自、職場を振り返り、コトの大小も関係性もいろいろな“自分がひっかかりのあったことがら”を洗い出し、整理します。大きなサイズの伝版®「花」をつかって進めます。

ところで、こうした「簡単には整理できないこと」「考えづらいこと」について「思考」や「整理」を始めることを助けてくれるのがグラフィックの力!評価する目的ではなく、書いたことに正解・不正解はなく、優劣もありません。

続いて、伝版®「花」で俯瞰した現状をチームで共有してみると、共感や承認、ねぎらいの言葉が行きかっています。どうやら皆さんが当初思っていた以上に、課題は共通するようです。現状を踏まえた上で、どんな職場にしていきたいか、思いを出しあっていきました。

最後に、それぞれがメンバーとの交流を経て“よりよい職場にこれだけは欠かせない!”と実感したことを言葉にし(「花」に記入)、その実現にあたり課題となるであろうことを具体化しました。課題を「敵」にみたて、伝版®「七人の敵」をつかって洗い出しです。具体的になった敵については、次回までの1カ月間に、対処法を考えて試しに実践してきていただくことに!

◆第2日目「ありたい姿に向けて」(10月13日)
前回より格段に大きな「おはようございます」の声とともに、約束するでもなく時間よりずいぶん早くに集まられた皆さんでした。早速この1カ月のアップデートが始まっているチームも。こういう自然な変化にたちあうとき、ファシリテータは結構うれしいきもちになります。

この日は、前回の伝版®「七人の敵」をつかっての宿題(課題の解決案を考え、試しに実践)の振り返りからスタートです。

この1カ月間に「行動を起こしたこととその結果」をチームで共有してみると・・・
職場ではとりわけ人を見守り、育てる立場にある皆さんだけに、コミュニケーションに関する挑戦が多かったようです。たとえば、挨拶するときの声かけやスタッフの話を聴くときの表情・姿勢など、ほんのちょっとしたことを意識して変えることで、コミュニケーションがぐっと取り易くなった!など、変化を実感しているという報告が多く出されました。ファシリテータが伝えた「自分が意識する・自分が変わることで、何かが動く!」を実感いただいたようです。

チーム交流しながら気づいたことはどんどん伝版®七人の敵」に書き加え、「七人の敵」がリッチに埋められたところでシートを手に皆さんが移動します・・・二人、三人とまだ話したことのなかった参加者を探しては、この一カ月の経験を立ち話で共有し、どんどんチームをシャッフルしていきました。

何人もが同じことにチャレンジするとしても、経験のありようはさまざまです。また「ある経験」にしても、人によってそこから得る学びはいろいろです。仮にAさんが「自分がある経験から学んだこと」をBさんに共有したとしましょう。Bさんは「Aさんが気づいたこと」を参考にするだけでなく、「Aさんの経験」からBさんならではのAさんと違う発見をすることもあります。そのBさんの発見を聴いて、Aさんが自分の経験をまたちがった角度でみつめることもあるでしょう。

さて、アイディアいっぱいになったところで、いよいよビジョンづくりのスタートです。伝版®「木」をつかい、半年後の《ありたい職場の姿》を具体的にイメージしました。「設定した目標を目安に行動を始めていくことは大切ですが、変化の時代にあっては長期・大局・根本を基本として、一喜一憂しすぎず柔軟に《軌道修正する力》こそが肝心!」そんなファシリテータのメッセージもそえながら、大きな目標に向かい、行動計画を策定しました。

いよいよ研修もしめくくりです。お互いのお顔がみえるように全員で輪になり、半年後となる今年度末までに「こんな職場にしたい!」というありたい姿とご自身の行動計画を発表していただきました。「普段は別の生協、事業所であれ、目標を共有することでお互いがお互いのサポーターになろう!」という気持ちをこめて、拍手を送り合う温かい場となりました。
 
終了後は、主催者である東京都生協連の働きかけを受けて、年度末の「ありたい姿」実現に向けて、途中報告や交流を目的に第3回の自主的な集まりを実施することが決まりました。
“必要だと思ったらいつでも学び合うことができる”生きたネットワーク、たしかにうまれたようですね!

【参考】そのほかのチーム・ネットワークづくりの現場における伝版®活用の一例
  >>ダイバーシティを活かすチームビルディング(JICAプロジェクトチーム)

*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性と変化あふれる社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。

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