2017年4月27日

ふくしまの伝統工芸品・大堀相馬焼がつなぐ、          こどもたちの《伝え合い力》を引き出す場

『らくでん式・英語インプロ』、そもそもの話

松永窯にて 3代目窯元ご夫妻
松永和生さん・京子さんと
4月半ばの土曜日。
これからひらく東北の桜を愛でようという人々でしょうか。いくつもの団体旅行客が降りたのは、東北新幹線「新白河駅」。この駅があるのは、福島県白河郡西郷村(にしごうむら)。

東京駅から東北新幹線で1時間25分ほど。史上「白河の関」でも知られるみちのくの玄関口は案外と近くにあります。

団体さんに続いて降りたのは、『らくでん式・英語インプロ』ワークショップを東北で初めて開催する、楽伝の英語インプロチーム、
柴橋美穂・柴山純・辻野恵美子・山本由紀子の4人です。
 
翌日にこどもたちに向けたワークショップをひかえ、この日は、今回の開催に向けてさまざまにご協力をいただいているふくしまの伝統工芸品・大堀相馬焼*の2つの窯元を訪問しました。
*参考:注1「大堀相馬焼」

◆桜は北から順に
《東から浜通り・中通り・会津地方》


 
福島県は、奥羽山脈と阿武隈高地をもつ地形から、その山地を区切りとし、東西3地域(東から「浜通り」「中通り」「会津地方」)にわかれ、それぞれに異なる地形・気候のもと、独自の文化をもつといいます。

英語インプロチームが訪れた白河市は、「中通りの南部」、県の南=「県南エリア」に位置します。人口は61千人強、市内には市立の15の小学校と、8つの中学校があります。那須連峰にほどちかく、夏は比較的涼しく、冬は吹き降ろす「那須おろし」で氷点下二桁の厳しい寒さ。

‟福島では北から順に桜が咲くんですよ。浪江に比べるとだいぶ寒いです。”

おしえてくださったのは東日本大震災前まで「浜通りの北部」にある浪江町・大堀地区に暮し、いまは白河に*おられる大堀相馬焼いかりや窯 13代目の山田慎一さんでした。
*参考:注2「大堀相馬焼の再生」

◆『らくでん式・英語インプロ』誕生のこと
東北入りする『らくでん式・こども英語インプロ』ですが、今号ではその「そもそもの話」をご紹介します。その誕生は、今回の開催地のあるふくしまと関わりがあります。

再生ヘ、10人のデザイナーとコラボした二重焼
午年の2014年から愛される
KACHI-UMA』シリーズ
さかのぼるのは東日本大震災の起きた2011年。
楽伝が普及する「伝版®」「ひとふでんず」といったコミュニケーション促進ツールの開発者でもある株式会社伝耕は自らのマーケティングの専門性をもって大堀相馬焼のリブランディングのサポートをスタートしました。以来、協働を継続しており、そのご縁から2015年には楽伝も、地域貢献部*が大堀相馬焼の再生に関わる活動に関わらせていただきました。
*参考:注3「楽伝の2つの事業領域」

【楽伝・地域貢献部の活動】
>>大堀相馬焼‘COOL JAPAN IDEA BOOST
   (20153月)

>>ふくしま福光(ふっこう)プロジェクト主催  「SOMATOワークショップ」(20157月)


これらの活動の過程で私たちは、歴史ある地域ならではのおとなの成熟したコミュニケーションのありように触れる一方で、多文化共生の時代をすでに体現する若者たちの奮闘ぶりに立ち会ったり、若者に続く層である小中学生のお子さんをもつ親世代の方々と交流し、親たちより先の時代を生きるこどもたちが育むべきコミュニケーション力について、想いをお聴きしてきました。

親より先の時代・・・
それは「地域の中か、外か」「国の中か、外か」といった枠での捉え方を超越する多文化共生時代。

そのときこどもたちが人生を楽しんで生きていくには?
ー 「わたし・ぼく」を確立しつつ、「自分とはちがう、ほかの人」を受容し、その多様な価値観を持つ人々と、一緒に考え、それぞれの強みをあわせながら問題を解決し、新しい価値を生み出して社会と関わっていけるようになったらすばらしい!

そのとき、力となるのは?
ー 《伝え合い力》こそが生き抜く力になる!

地域貢献部としてのふくしまとの関わりを通じ、メンバーはそう確信しました。
一方で、楽伝のもうひとつの事業領域・社会教育部のメンバーは、20年以上にわたり小中学生の英語教育の実践と研究に携わるなかで「英語学習は、こどもたちが“自らを発信し、相手を受けとめ、力をあわせる”力を育む絶好の機会」と考えていました。

2つの事業領域からの想いが重なり、
プログラムの開発に着手。《伝え合い力》の育みを目的とした『らくでん式・英語インプロ』が誕生しました。

右に出るものがいない、縁起よい「走り駒」
◆大堀相馬焼がつないだご縁
こんな『らくでん式・英語インプロ』でしたから、関西で開催を重ねたのち、このたび東北地方での初開催を検討するにあたっては、プログラム誕生のきっかけのご縁である、大堀相馬焼の2つの窯元、いかりや窯/いかりや商店(現在の工房:白河市大信)、松永窯/松永陶器店(現在の工房:白河市に隣接の西郷村/にしごうむら)が、暮らしと窯を浪江町から移された「中通りの南部」は、楽伝にとって自然な選択でした。

さて、英語インプロチーム一行は、午前中に松永窯、午後にはいかりや窯を訪ね、あらためて大堀相馬焼の歴史にふくしまの文化を学ぶとともに、翌日ワークショップに参加する窯元の小学生の娘さんをはじめ、ご家族の皆さんとすっかりくつろがせていただき、東北初開催の現場に向けて最高のウォーミングアップをしました。

翌、日曜日はいよいよワークショップ開催!
このくわしい模様は、次号でご紹介します。どうぞお楽しみに♪

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注1:大堀相馬焼
うつくしい貫入音とともにあらわれる
「青ひび」
300年の歴史をもち、大震災前にはふくしまのどこの家にもあったといわれるほど、地域の暮らしと文化の一部である伝統的工芸品(1978年通産省・現経済産業省指定)。

現在の大堀相馬焼には3つの特徴がある。
1.走り駒(うま)
「右に出るものがいない」との意味で縁起良い左駒(左を向いて走る馬)。大堀相馬焼は縁起がよい陶器とされる由縁。

2.青ひび
計算された素材と釉薬との収縮率の差から、焼きあがり窯から出すと、「うつくしまの音30景」に選ばれた心洗われる音(貫入音/かんにゅうおん)をたて、表面に細かい地模様が刻まれる。

3.二重焼
二重構造は大堀相馬焼独特の珍しい技法。飲み物が熱くとも安心して持て、さらにお湯が冷めにくい。冷たいものを入れれば、ぬるくなりにくく、結露しらず。
人々の暮らしに融けこんだ陶器こその使いやすい工夫。

注2:大堀相馬焼の再生
冷めにくく、熱い湯を入れても持てる
独特の技法「二重焼」
東日本大震災以前は、「浜通りの北部」の浪江町、大堀地区に25軒の窯が住み暮し、作品をつくっていた。
震災に伴って生じた原発事故により浪江町に暮らし続けることが困難となり、また、陶器の素材となる「土」や販売していくための従来の「チャネル」が消失し、大堀相馬焼は存続の危機に瀕した。

その後、大堀相馬焼共同組合と福島県ハイテクプラザ(工業試験場)の共同研究・試験により、従来にかわる陶器の素材を開発。協同組合が、「浜通り」から「中通りの二本松市」へ移り、「陶芸の杜 おおぼり二本松工房」として共同窯を再建。そのほか、いかりや窯や松永窯のように、土地を移って再開する窯がではじめ、現在は各地で10軒の窯元が再開している。

注3:楽伝の2つの事業領域
1.社会教育部
“こどもから社会人”までさまざまな世代の「《伝え合い力》の育成」と「キャリア形成」に役立つ、ユニークなツール(「伝版®」「ひとふでんず」等)を採用したオリジナルプログラムを開発・展開。

2.地域貢献部
「地域の活性化=まち・ひと・しごとの創生」や、大堀相馬焼などの伝統工芸品に代表される「伝統の再生」への支援を実施。

*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性に満ち、変化の激しい現代社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。

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