楽伝は、キャリア教育/キャリア開発への取り組みの過程で得た問題意識と知見を発信する活動として、株式会社伝耕と協働し、日本心理学会年次大会における発表を続けています。
さまざまな立場からこのフィールドに関わる専門家の皆さまに刺激をいただくことが毎年の楽しみです。
2016年は7月24日~29日に神奈川県横浜市(パシフィコ横浜)で共同開催された第31国際心理学会議(ICP)/日本心理学会第80回大会にて、発表を実施致しました。
さまざまな立場からこのフィールドに関わる専門家の皆さまに刺激をいただくことが毎年の楽しみです。
2016年は7月24日~29日に神奈川県横浜市(パシフィコ横浜)で共同開催された第31国際心理学会議(ICP)/日本心理学会第80回大会にて、発表を実施致しました。
今年度のICPは“Diversity in Harmony: Insights from Psychology”を開催テーマに、63項目のトピックにおいて研究や活動を通じた知見の発表が実施されました。
その中の“Industrial and Organizational Psychology(組織心理学)”のトピックのもと、我々は“Career Adaptability: A Qualitative Understanding from the Cases of Career Changers in Japan”と題し、ポスター発表を行いました。
その中の“Industrial and Organizational Psychology(組織心理学)”のトピックのもと、我々は“Career Adaptability: A Qualitative Understanding from the Cases of Career Changers in Japan”と題し、ポスター発表を行いました。
◆本研究テーマの背景
キャリアについて考える際、「変化の激しい時代」という枕詞がつくようになって久しいですが、年功序列や終身雇用の習慣・制度が根強い歴史をもつ日本社会で知見が蓄積されてきた「既存の組織内におけるキャリアの有り様」に関する考察だけでは、次世代への学びの契機としては十分ではないと感じてきました。転職経験をもってキャリア形成をはかってきた人の割合がいまだ限られるわが国においては、自ら環境の「変化」を受け入れる選択をした転職者が「変化」の前後で、何をコンピテンスとして新しい環境に持ち越し、何を捨てて改編したのか、新しい環境で学んだことは何かなどについて、様々な事例や身近なロールモデルを参照して学ぶ機会はほとんどないのが現状です。
キャリアに関連して、今後どのような未来が待っているか、予測がつきにくい側面もありますが、個人が望むと望まざるとにかかわらず、変化に直面する確率(Probability)は今後いっそう大きくなります。
そこで、すでに変化を経験したキャリアチェンジャー(転職経験者)の戦略と、彼ら彼女ら自身の学びの経験を《共有知》とすることを目指し、転職経験者8名の方を対象にした探索的インタビューを実施することを決めました。
◆キャリアチェンジャーに学ぶ“転換力”
転職経験者には、ライフヒストリーを語ってもらう形式で、これまでのキャリア、各キャリアにおける学び、キャリア間における継続性や適応可能性について多方面からお話をしていただきました。8名の転職経験者の方に共通する「態度(行動に先立つ心構え)」は、「保持すること」と「捨てること」、「新しく得ること」についての逡巡が少ないこと。
― そこから浮かび上がったのが《転換力》です。
《転換力》とは、Aという条件の中で奏功した要素を未知のBという条件に適応させるための探索行動と,適用を試みる行動の二つを指すと、われわれは定義していますが、転職に際し、転職経験者は「転換」を生じさせやすい「3つの態度」を持ち、「2つの転換行動」を行うことで、新旧の環境(職場)をつないでいることが見いだされました。
「転換」と「転換行動を生じさせやすくする態度」についての詳細は以下の通りです。
【Conversion(転換)を生じさせやすくする態度】
<好奇心>・新しいコンテクストで学べること・身につくことが何かを探索する
新しいコンテクストだからこそ学んだり、新しく学べる領域・知識について、想定できる範囲で具体的にイメージし、仕事に対するモチベーションを維持することができる。
<コントロール>
発表ポスター |
「変化」の後に必要なスキルやメソッドが何かを特定したら、成果をどの時期にどの程度出すのかについて急ぐことなく、新しいコンテクストで自らが成果を出す時期とレベルをじっくりと見極めて行動する。想定した分野で仮にすぐには成果が出ないことがわかったとしても、「待ち」の状態が続くことに否定的なイメージを抱かない。
②転職によって、ライフとワークの関係を見直すことが、より良いストレスマネジメントにつながると認識する。
前のコンテクストと、新しいコンテクストを比較して、自らのより良い人生のために必要なワークとライフの有り様について見直すことができる。
<関心>
・他者に学び、職業アイデンティティを改訂する。自己認識のみにとらわれず、ジョブマーケット・新しいコンテクストでの他者からの要求やフィードバックを参照して、職業アイデンティティを改訂することができる。
【転換行動】
1)コミュニケーション様式を変更することを試みる。コミュニケーション様式はコンテクストにより異なることをあらためて認識し、新しいコンテクストで求められるコミュニケーション様式を模索しようとする。
2)奏功するビジネススキルが何かを見極め、あてはめる。
事前に想定してきたものであるかどうかに関わらず、新しい文脈において競合優位性のあるビジネススキルが何かを分析し、ビジネス場面におけるマナーから一般的なビジネススキル(プロジェクトマネジメント)や専門的なビジネススキル(マーケティング・財務分析等)など、コンテクストの変化に応じて役立つスキルのオプションを想定し、あてはめてみる力を発揮する。奏功した場合には、結果としてその成果を周囲に共有することができる。◆実践を通じ、学び続ける
当日の発表では、若年層の職場への定着を研究している民間シンクタンクの研究者の方、国内情勢がいまだ不安定で今後の労働市場の大きな変化が想定されるウクライナの研究者の方など、キャリアチェンジがご自身のあつかう課題と直結していると感じておられる方々が興味をもってくださったようです。
われわれは今後とも「NPO法人楽伝における社会活動を通じての学び」と「伝耕における営利企業としての活動からの知見」を意識的につなげ、両者の実践経験をひきだし、ひもとき、くみたてることによって、皆さまのお役に立てる情報の発信、さらには新たなツールとノウハウづくりを手掛けてまいります。
今回取り上げたキャリアチェンジというテーマについても、「研究」という領域のみに特化した専門家ではないわれわれだからこそできる実践的研究を、今回の発表をスタート地点として続けていきたいと考えています。
今回取り上げたキャリアチェンジというテーマについても、「研究」という領域のみに特化した専門家ではないわれわれだからこそできる実践的研究を、今回の発表をスタート地点として続けていきたいと考えています。
*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性と変化あふれる社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。