2015年11月26日

「ひとふでんず」ってなに?

“楽しく伝える”コミュニケーションツールです

「人生は短く、芸術は長し」とは古代の賢人ヒポクラテスのことば。
 芸術といって真っ先に思い浮かべるものの1つが「絵」ですが、私ときたら「ちょっとした絵」でいいから描いて、と言われるとドギマギ、絵は苦手だからと後ずさり。古代人よりも人生はずいぶん長くなりそうなのに、今後、絵がうまくなりそうな気配はありません。
でも、「漢字」ならば書けます。パソコンやケータイのない時代から書いていたのですから、機械に頼らずとも今の若い人たちよりは正確に書けるかしら。

そういえば漢字は象形文字。
季節のひとふでんず
「こたつ猫」
“身の回りにある情景を切り取った絵”が漢字の始まりです。それも「芸術的な絵」ではなく「ちょっとした絵」。「山」「川」などの単純な漢字は、どんな絵からできているかがすぐに想像できますね。

漢字を書くことはつまり「ちょっとした絵」を描くこと!そう思うと少しは元気が出てきます。でも所詮それは単なる個人の言い分。漢字を書いても、他人には絵だと思ってもらえず自慢できません。そこで、絵の苦手な私でも描け、かつ少しばかり自慢できるちょっとした絵を作ってみようと思い立ちました。

◆はじまりは「伝図(でんず)」
ところで「ちょっとした絵」のコツは、描いた絵を見た人が、それが何の絵であるかすぐにわかること。わからなければそれを表す漢字を書いていた方がマシです。わかる絵を描くには、誰もが知っているものを対象にして、誰が見ても「ああ、アレの絵ね」と、瞬時に伝わる簡単な図にしなくてはなりません。
とりあえず、そういうものに「伝図(でんず)」という名前をつけ、作りはじめました。ところが、できた「伝図」をいざ描けるようになると、なにやら簡単すぎて自慢にもならず「つまらない!」となってくるのです。
 
「そもそも絵が苦手なのに、そんな贅沢なことを?」ですが、なにせ自分たち自身で「つまらない!」のですから、ここはそのままにせず“絵が苦手な人でも挑戦できて自慢できる絵ってどんなもの?”と考えをめぐらせてみました。

そういえば漢字だって、初めはたいそう複雑だったモチーフが、幾度も幾度も続けて描かれるうちに、だんだんと枝葉が簡略化され、シンプルなラインからなる「漢字」になってきたのでしょう。つ
まり“ひとふでがきのように”描いていたら「漢字」ができた、と。それならば私たちはひとふでがきの「伝図」を作ろう!と思いつきました。
 
◆「ひとふでんず」誕生
たとえシンプルな図柄でも、ひとふでがきにして描いてみると楽しいし、そして、実際に描いてみたものを見せると「えー、これ、ひとふでがきで描いたの?すごーい」と褒められます。
こうして、褒められた勢いにもまかせ、日常のモチーフをひとふでがきにしてくれるデザイナーに「ひとふでんず」の創作を依頼しました。ひとふでで、誰にでも伝わるちょっとした図=伝図、

「ひとふで」+伝(でん)+図(ず)=「ひとふでんず」
 
を作るという使命を勝手に背負い「ひとふでんず」を創作し、少しずつ世に発表することにしました。

「ひとふでんず」は単純になぞってみるだけで、絵が描けた気分になりますし、単純なものであれば、練習すれば下絵なしで描けるようになります。
「ひとふでんず」をなぞるだけもよし、何回か描いて覚えるのもよし。さらにできた「ひとふでんず」に色を塗ったり、何か別の絵を書き加えたりして世界でたったひとつの作品にするのもよいでしょう。ひとりで描けるようになった「ひとふでんず」を人に見せると、判を押したように相手が驚いてくれて、ちょっと鼻高々な気分になります。
 
◆まだある「ひとふでんず」効果?
これもあれも「ひとふでんず」
ところで、あくまでも経験値としてですが、
「ひとふでんず」には不思議な力が秘められているようです。描いている時には集中力がアップ。簡単なようでいて実は、次にどちらへ進もうかと迷う分岐点では頭を使いますし、大きな「ひとふでんず」と小さな「ひとふでんず」を描くときでは身体の中で使う筋肉が違うようです。
冒頭(写真)でご紹介した「こたつ猫」はシンプルな図柄ですが、こたつの形をしっかりとりつつ、猫やこたつ布団、みかんの曲線にも気を配りたいところ。これが人物の肖像画や風景など、複雑な図柄となればむずかしさは天井知らず。こどももおとなも呼吸を忘れて静まり返る「ひとふでんず」タイムです。

「ひとふでんず」を楽しく描く生活を続けていると、だんだん「ひとふで脳」ができてきます。ふだんの生活で目に入る風景やモノをなんとかひとふでで描けないものかとついチャレンジしてしまう瞬間……。そんなときは「ひとふで脳」が働いているに違いありません(笑)

単純なようで実は奥深い、「ひとふでんず」の世界。ぜひいろいろな場面で楽しんでください。シンプルな造形ですが、意外とパワフルなコミュニケーションツールとなってくれることでしょう。

ちなみにこの「ひとふでんず」、前号では「建設業」コミュニティの一端を伝えるモチーフとしての岩手県での仕事ぶりをご紹介しました。このほかにもいろいろなコミュニティ=地域の活性化モチーフとして働いています。

◆大阪・四天王寺で
スイーツにひとふでんず
「四天王寺の五重の塔と亀池」
1400年前の古代には日本で最も栄えた国際交流都市だった四天王寺は、今も地域(ローカル)とグローバルが入り混じった摩訶不思議なパワーにあふれたエリアです。そんなコミュニティらしさを「ひとふでんず」にして発信されています。
 
つい先日は、素敵なスイーツの上に、四天王寺バージョン「ひとふでんず」の1つ「四天王寺の五重の塔と亀池」のチョコレートプレートが(右写真)!
 
四天王寺にちなんだ女子会イベントでのご賞味と相成り、登場するなり「キャー」の歓声を浴びていました。
なんだかすごい、「ひとふでんず」パワーです!

理事長 西道広美 拝

*次号はお待ちかね、2016年度『伝版®ダイアリー』についてのご案内です。
  どうぞお楽しみに!

2015年11月12日

”ひとふでんず” 小学校へ行く!

小学生のための『建設業ふれあい事業』by 岩手県建設業協会千厩支部
 
10月20日(火)、岩手県一関市立川崎小学校でのひとこまです。右の写真、こどもたちは何をしているのでしょう。

ショベルカーの“ぬりえ”? 

実はこれ、ただの“ぬりえ”ではございません。

いろいろなモノを“ひとふでで描くこと(一筆書き)”ができるとくべつなグラフィック『ひとふんず』という、楽伝が提供するツールの1つです。

◆「重機」の『ひとふんず』
折々の季節のモチーフから、人物像、さらには地域ならではのご当地アイテムまで、なんでも一筆書きになるグラフィック『ひとふんず』ですが、今回は建設業で使うさまざまな「重機」が『ひとふでんず』になって小学校へ!

高所作業車、たか~い!
こどもたちはクレーン車やショベルカーなどの働くくるま・
重機の『ひとふんず』の上に紙を敷くと、くっと息をつめて
一筆書きでの写し絵に挑戦です。一筆書きの終点にたどり
つくと、あの、大きくてふくざつなカタチのクレーン車や
ショベルカーが、自分の描いた絵としてココにあります。
しずかに息をゆるめる表情からは「できた―!」と心の声
がきこえてくるようです。
あとはおもいおもいの色を塗ると、どうでしょう。とても
カラフルで見ていて元気が出るような重機たちが出来上が
りました!

岩手県建設業協会では、県内各地の小中学校、工業高校
などを対象に、建設業に携わる皆さんが学校を訪問し、
児童・生徒たちにわかりやすく建設業について紹介する
「建設業ふれあい事業」を、協会の各支部の運営により
開催しています。
重機の試乗や測量機器の操作体験など、カラダで体感
してココロ揺り動くひとときは、こどもたちにとって
楽しく学べるキャリア教育のきっかけにもなっている
ようです。

◆一関市内の小学校での取り組み
こどもたちに伝わる体験を!と協会各支部ではプログラムに工夫を凝らされています。その中で、岩手県南部に位置する千厩(せんまや)支部様では『ひとふんず』を2013年度、2014年度に引き続き、今年も活用いただいています。


バックホウ、行きます!
今年度は、一関市立川崎小学校1、2年生、
44名の児童が参加されました。
校長先生のお話に始まり、協会側40名のプロ
の皆さんのサポートを受けながら、高所作業車
(写真)試乗や、バックホウ(油圧ショベルの
一種。右写真)の運転体験。さらに測量機器体
験など、身体で建設業のおしごとを体感すると
ともに、重機の『ひとふでんず』の一筆書きに
挑戦しました。

『ひとふでんず』は“A4サイズの紙1枚に一筆
書き”のシンプルなグラフィック。それゆえに、
こどもたちにとっては「見上げるほど大きく、

ただいま『ひとふでんず』中!
ふくざつな造り」の重機も、「自分の手元で、たった1本の線で特徴的なカタチをわかりやす
くとらえ、全体像をみる」ことができます。
「重機に乗る・運転するカラダ全体で感じる体験」と、「全体を俯瞰できる1枚のグラフィック
『ひとふでんず』として捉える体験」が、こど
もたちの中で合流していったその先がなん
だかとても楽しみになります。
 
>>当日の模様、くわしくはコチラ
 
その後、こどもたちが描いた『ひとふでんず』は「ひとふでんずイラスト展(写真)」にて一堂に会しました。

ひとふでんずイラスト展
>>「建設業ふれあい事業・ひとふでんずイラスト展(2015年度)」の模様はコチラ
 
さて、今回ちらりとご紹介させていただいた
『ひとふでんず』。次号では“楽しく伝える・
キャリアをつくるネットワークの楽伝がなぜ?”
を含め、「ひとふでんず」のあれこれをさらに
お伝えしていきます。





*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性に満ち、変化の激しい現代社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。

2015年10月22日

「異物」に自らをさらす体験、そのあとに。

体験学習の在り様に想いをめぐらせながら

3か月ほど前、夏が始まる頃に楽伝の本拠地・黄色い家に参集した若者たち―関西と福島の学生を中心とする「ふくしま福光(ふっこう)プロジェクト」による「SOMATOワークショップ Powered by Rakuden」参加メンバーが、秋の気配が色濃くなってきた黄色い家に再び集まってくださいました。楽伝・吉田がご一緒して、この3ヶ月の活動を振り返り、「伝統工芸」と「自分自身」という2つの「これまでと今後」について考えるSOMATOワークショップ総括編の開催です。


伝版®にもすっかりなじんだみなさん。
「川」で内省する《コレマデ》
せっかく楽伝の黄色い家で《コレマデ=来し方》と《アシタ=未来》を考えるのならば、SOMATOワークショップ1回目、2回目に続き、今回も伝版®でまいりましょう!
今回はこの3ヶ月を内省した《コレマデ》を伝版®「川」にてかみしめていただき、「伝統工芸」と「自分自身」の《アシタ》を伝版®「種」に広げて考えていただくことにしました。

◆「川」で内省する《コレマデ》
「川」の伝版®では、この間に福島で伝統工芸・伝統文化にふれた体験やそこで出会って向き合った人々とのことのみならず、ご自身の日常生活での できごとも内省していただき、3ヶ月の間に新たに生まれた自分の気持ち、一方で以前から変わらず持ち続けている気持ちなどを言葉にしていただきました。
皆さんの発表をうかがうと、福島の企業のインターンシップに参加したこと、バイトやサークル活動にまるで川の流れに乗るように携わったこと、新しく始めた仕事に忙殺されたこと、力の限界を見極めていったん関西で就職することに決めたこと、研修旅行でフランスに行ってひたすらワインを飲んだこと、改めてCivic Pride(地域に抱く誇りや愛着)について考えるようになったこと、別れがあり出会いもあったこと等々。この3ヶ月間のお一人おひとりの体験、そしてそこに生じた気づきや想いが、誠にバラエティに富んでいることに驚かされました。
 
◆「種」で見通す《アシタ》
「種」で見通しかけている《アシタ》を語る
来し方を振り返ったあとはいよいよ未来へ。
この3ヶ月間の経験を経て、明確に《アシタ》につなげたいと思うこと、何か自分のなかで心にざわつきを感じたものの、そのざわつきの輪郭がはっきりしないまま《アシタ》に持ち越したいものなどを、「種」の伝版®に書いていただきました。

◆「異物」に自らをさらす“体験”こそ
ところで、思えば我々が生まれてこのかた身につけてきた、所属グループ・地域・社会・文化といったものに由来する「型(固定観念に基づく態度)」と、その「型」から生まれる「癖(固定観念に紐づく行動習慣)」は意識できないレベルで内在化されています。ゆえに我々が「自分」について考える際は、ひたすら自分だけに向かい、自身の頭や心や身体をのぞき込む時間も大切である一方で、自分と異なるグループ・地域・社会・文化の刺激(あえて「異物」と呼ぶことにします)に自身をさらす新たな“体験”をすることにより初めて、自らの行動や想いを相対化して位置づけ、俯瞰することが可能になります。ある種の「異物」に触れることで可能になるこの俯瞰作業によって、自身の来し方を礎に、《アシタ》をデザイン、あるいはRe-デザインし、少しずつ新しいページをめくることができるようになります。

ちなみに「異物」を内在化までする“正しい体験学習を自ら実践できること”は1つのスキルであり、磨きうるものです。SOMATOワークショップ参加メンバーは、伝統工芸という、自分の日常からすれば決定的に新たな“体験”を重ねて触れた「異物」たちを「川」の伝版®を通じて内在化する工程を経験したことで、この3か月間に並行してSOMATO以外で“体験”したできごとについても「異物」を積極的に見出し、俯瞰することがしやすくなられたかもしれません。

◆焦らずに吟味する
さて、新たな“体験”で得た「異物」は、なんといっても『異物』ですから、たとえ良い刺激であったとしても、それらを活用するにはちょっとしたコツが必要だと、楽伝は考えています。
たとえば、この3か月間のたくさんの新しい“体験”で得た「異物」が、《アシタ》の自分にとってどのような意味を持つのか、その「異物」をどのように内在化することで自分の《アシタ》をデザインあるいはRe-デザインするかは、すぐに答えの出るものではないでしょう。もしかすると「異物」のまま飲み込んで、そしてしばらく経ってから吐き出すしかない、結果として役に立たないとの結論になるかもしれません。ただ、慣れ親しんだ世界では触れることのできない、せっかく触れた「異物」ですから、どのように自分の役に立つのか、新しいページをめくるのに必要なものかどうか、あえて焦らずに一つひとつ吟味することが大切でしょう。皆さんが折に触れ、この日の「川」「種」を見返し、書き足し、《アシタ》探索に活かされることをオススメする楽伝でした。

《アシタ》に向かって!
3ヶ月にわたった2015年夏のSOMATOワークショップはこれで本当におしまい!「種」の伝版®に書かれた“輪郭のはっきりしているもの/していないもの”、そのどちらとも、自らの新しいページにつながる可能性のあるもの(種)として、大切にお持ち帰りいただきました。
さてさて、お一人おひとりが飲み込んだ異物の種が、これからどのように変化していくのか?
それは楽伝の密かな楽しみとして。
 
 

*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性と変化あふれる社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。
 
 

2015年10月8日

キャリア教育、求められるは“学びほぐし”

日本心理学会第79回大会、発表を終えて

シルバーウィークの後半9月22日(火)から3日間にわたり、日本心理学会第79回大会が愛知県名古屋市(名古屋国際会議場)にて開催されました。楽伝は、最終日9月24日(木)に《一般研究発表:ポスター発表》と《チュートリアルワークショップ》を実施致しました。

チュートリアルワークショップで
“転換ワーク”を体感いただく
今年の楽伝発表テーマは「大学生のキャリア開発における自己能力発見過程」。

ファシリテーションにおけるグラフィックツールの使用効果について「伝版Ⓡ」を体験いただきながらご紹介した昨年第78回大会での発表からさらに進め、4年制大学のキャリア教育講義で行われた“転換”ワークショップの模様を分析し、発表致しました。
 
《一般研究発表》に続き、11時40分より《チュートリアルワークショップ(2部構成、合計80分間)》を開催し、楽伝理事長の西道広美、理事の山本由紀子がご一緒させていただきました。

教育機関でキャリア教育に携わる先生方を中心に、さまざまな立場からキャリア教育に関わる専門家の皆さまに出会い、ご関心を頂きました。

多様なキャリア教育の現場にあって、学生・生徒さん、保護者の方々、教職員の方々を巻き込み、キャリア開発に資する学外の専門家や専門組織との連携を模索し、学生・生徒さんがキャリア開発力を養う環境づくりをされている先生方のご意見を伺い、大いに刺激をいただきました。    

◆第1部:若い世代のキャリアをどう考えるか?
理事長・西道より、楽伝が提供するプログラムが前提としている「これから社会に出る若者が直面する激変した社会でのキャリアの在り様」、すなわち、あと30年ほどで実現するといわれる「シンギュラリティ(技術的特異点)」到来の影響も視野に入れ、従来とは異なる視点を要する『キャリアの“アシタ”』について、楽伝の考えを共有致しました。

続いて、キャリア教育現場における学生側の課題として「自尊自立・自己駆動力が弱い」「論理的思考やコミュニケーション能力が弱い」といった声があり、一方、運営上の問題として「『気づき』を促進するための教育内容や場面づくりの工夫が不十分」という声がある現状(「大学におけるキャリア教育のあり方(平成17年社団法人国立大学協会)」より)をふまえ、これまでの教育に“加えて”求められる、変化の激しい社会を見据えた教育プログラムを支える要素(=必要なモノ・コト)について、これからのキャリア形成に欠かせない4つの態度と2つのスキル『6C(powered by Rakuden』等をご説明致しました。

◆第2部:自己能力発見過程“転換ワーク”
転換の促進をサポートする
“ネイル”などの《転換例》
楽伝理事・山本由紀子がファシリテータとなり、『6C(powered by Rakuden』の中でもキャリア教育でのワークショップ的体験(行動)を通じて力をつけていくことが重要かつ可能となる「行動に関わる2つのスキル:《他者との協働》と《転換》」に焦点をあて、実際に大学等教育機関で実践している“転換ワーク”の一部を皆さまに体験いただきました。

この“転換ワーク”の実際にご関心があってのご参加が多かったようで、面識のない2人組になっていただいてのひとときながら、
皆さま熱心に没頭いただいておりました。

◆求められるは“学びほぐし
今大会中に出会った方々から幾度か伺い、印象深かったお声の1つに「(現場を)振り返ってみると、私たちは“もうある/もう持っている”ことを前提にしすぎているなぁ、と感じました。」というものがありました。

たとえば「自分が好きなこと」「自分がわくわくすること」といった《好奇心の対象》から、「夢」「なりたい姿」「ありたい姿」といった《ビジョン》まで、そうしたものは学生・生徒さんそれぞれがすでに自身の中に“持っている”はずで“顕在化しうる”という前提に立ってしまっている、ということでした。

その背景には、《好奇心の対象》から《ビジョン》まで、それらを耕す方法=自ら意識化・顕在化させることが難しかったり辛さを伴う作業であるような、個人の奥深くにあるものを“学びほぐす”手法を提供することが容易でないという現実もあるようです。

《一般研究発表ポスター》
“転換ワーク”を含め、伝版®を活用した、楽伝の一連のキャリア開発プログラムで重視しているのは、まさしく、そうした自分の内面を《他者との協働》も通じ、“楽しく楽(ラク)に”発見し、表現していくことの応援ですが、この日は、“学びほぐす”を応援していくことの重要性と必要性を改めて実感させていただきました。

【ご参考】
「楽しく楽(ラク)に!伝版®開発の背景」はコチラ

さて、こうした場を通じて多様な専門家の皆さまからご意見をいただき、交流させていただくことで、楽伝は、現在の取り組みの質を俯瞰するとともに、将来のキャリア教育の現場でお役に立つ視点・情報・プログラムの在り様について、仮説検証したり、発見させていただいています。

おかげさまで昨年同様に、大会を終えたこれからの時期にますます元気になりそうな楽伝です。
 
楽伝は、激変するであろうキャリアを取り巻く環境から目をそむけず、伝えあう力を信じ、人生をひらく「個」を応援するという視点で社会に貢献するNPOとして、今後ともキャリア教育・キャリア開発等の在り様を問う場における発表活動を含め“発信”を行ってまいります。
 
*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性と変化あふれる社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。

2015年9月24日

“常時つながる”時代こその『孤独力』と心得る

伝版®開発の背景:楽しく楽(ラク)に!

季節すすむ、一心寺の桜。
仁王様のお顔を向うに。
シルバーウィークも過ぎ、ぐっと秋が深まる頃です。芽吹きの春を越えて夏には緑陰に涼を得るほどに葉を茂らせた木々たちも、この時期は変化の前にふと、歩みを止めて佇んでいるように見えます。しかし止まるはほんのひととき。次第に色づき、落葉の季節へと、確実に時は過ぎていきます。
 
そんな移り変わりを愛でようと、仲良しの二人が野山に出かけたとしましょう。二人は、同じ紅葉を目にし、同じ道を歩きました。 しかし、のちにそれぞれの経験を語れば、 心に感じたことや考えたことはもとより、時に、目にしたものさえ違っており、共に歩いたはずの体験も、その解釈や意味づけも、必ずしも一致しないことを知るでしょう。

人は誰しも、自分が経験し、意味づけした固有の世界に生きており、その世界は「自分たったひとりのものであり、他者と何らかの共通部分を見出すことはできたとしても、全体としては誰とも同一のものにならない」からこその現象です。

◆コミュニケーションとは「孤独」な間柄をつなぐもの
そう考えていくと、人生とは「常に唯一無二である経験」の生成する層を累々と積み重ねていく経過であると気づかされます。すべてが唯一無二であるとすれば、“個々人”の人生は本来的に「孤独」な性質を持つと言えるでしょう。そして「孤独」な“個々人”が形成する“集団”という存在は、あらゆる構成要素が唯一無二であるがゆえ、本質的に「多様性」を有することになります。

『社会的な存在』である人間は「孤独」を抱えて独りで生きていくことができないからこそ、「孤独」な存在が集まる状況の中で、自分とは異なる別の「孤独」な他者に『好奇心』を抱く。そして「孤独」な間柄をつなぐ『コミュニケーション』を必然として行い、情報をやりとりし“共に生きるための土壌”を作り続ける。-こうしたことが、生存のための前提として予めプログラムされているのではないかと私は仮説的に考えています。

この仮説がある程度正しいとすれば、インターネットで世界中の情報が得られ、SNSで多くの他者と常時つながる状態を確保できる時代の到来は、『コミュニケーション』を渇望する「孤独」な存在=我々には、まさに人類史上の革命でしょう。「つながる」ことの素晴らしさを無制限に享受できる環境に置かれているのですから。

◆「つながる」ゆえの「ウロウロ」も
ところで物事には、必ず両面があるもの。人々の反応をみていると“常時つながる状態を確保できる”状況は必ずしもすべての人の心の平安を約束するものではないようです。依存的な接触には副作用があり、膨大かつ多様で刺激に溢れた情報に制限なく接触した結果、それがその人のプラスになっていない現状がときにあります。

とめどなく更新される他者からの情報に自らを曝した結果、自分は時代遅れで役に立たないのではという恐れ、『コミュニケーション』の輪にうまく入れないと感じ、仲間外れにされているのではないかという心配、数多くの仕事や旅行・人との出会いをフォーカスしたエントリーを見て思わず他人をうらやむ心情等々。“共に生きるための土壌”づくりにつながっているというより、むしろ、無性に気持ちが「ウロウロ」してしまうことに悩む人も少なくないようです。

ちなみに、「ウロウロする」の「ウロ」の原義は仏教用語の「有漏」。煩悩や欲望を持っていることを指します。「ウロウロ」はまさに重なる煩悩や欲望にとらわれ、心が定まらない状態と言えます。

◆"犀の角のようにただ独り歩め" -『ブッダのことば スッタニパータ』
楽伝の“黄色い家”にも犀が!
実は「カリンバ」というアフリカの楽器。
なんとも心地よい音で、よく誰かの膝上に。
ブッダが存在したといわれる今から約2500年前。インドの森の中にはインド犀(サイ)が数多く闊歩していたそうです。インド犀の角は1本で、意外なことにその中身はぶよぶよとした肉で戦いにはあまり役に立たないとか。しかし、森の中でインド犀に実際に遭遇したならば、屹立する「角」は立派で、それを支える「体」も大きく、相対した相手は思わず距離を取ってしまう。この在り様ゆえインド犀は、他の生き物から襲われることがほとんどなく、他の生き物と共生する森の中で“常に自分の歩みを続けていられる”のだ、ということにブッダは心動かされたと伝えられています。

「犀の角」は、人間でいうならば何でしょうか?  ブッダを差し置き甚だ恐縮ですが、乱暴に解釈させていただくと「犀の角」は、唯一無二である自身のよりどころとなる「自分固有の軸」のようなものかと思います。そして「角」を支える「犀の体」は、その「軸」を支え、体現し、自らを「自分」たらしめていくための「基盤」でしょうか。           自分の歩みを続けていく(=人生をひらく)には、自らの「軸」を育み「基盤」を養うことが必要なようです。

そこで大事となるのが「自分に向き合う時間」をもつこと。向き合う時間を自らに課し、折に触れて自分の「軸」を更新し、支える「基盤」を確認できる力 ― それはある種の「能力」であり、  『孤独力』とでも呼べるものでしょう。“常時他者とつながる”時代に「ウロウロに悩む」を回避するには『孤独力(=自分に向き合う力)』の体得が第一歩です。

◆『向き合う』は“面倒で辛い”?
しかし、この『孤独力』を育むという作業にはそれなりのコツが必要なようです。「自分に向き合う」こと自体がストレスだと逃げてしまっている人も少なくないのかもしれません。

考えてみれば、ふだん我々がつい頼ってしまう、いわゆる“ストレス解消”のためと称される“モノやサービス”の多くは、「自分自身に向き合う」といった作業よりも、むしろ自分以外のものに一定時間注意をそらすことでストレスを忘れさせるという仕組みでもたらされるものがほとんどです。つまりストレスそのものを「解消」するのではなく、「一時的に忘却」させるわけですね。煩悩満載でお酒が好きな私はそういうストレス「瞬間忘却」方法を否定はしませんが、それだけでは流石にダメだろうと思うわけです(笑)。

“自分に向き合う作業が欠かせないということは、これほど力説されなくても重々承知している!”はい、多くの方がそうでありましょう。しかし問題は、その作業を、ことのほか“面倒で辛い”と感じる人が多いことなのです。だからつい避けてしまう。かくいう私もそうです。

◆“楽しく楽(ラク)に”『孤独力』を育むには?
煩悩満載で辛いことを避けたい怠惰な私でも“楽しく楽(ラク)に”自分に向き合える方法はないのだろうか?私のこんな勝手な思いが「伝版®」開発の動機につながりました。ちょっとした楽しさと機能性を備えた「伝版®」に向き合う時間を確保することにより、自分に向き合う時間が無理なく確保できる。ブッダの修行のような効果は約束できませんが、少なくとも修行よりずっと敷居が低いこと―そこが肝心(!)と信じています。昨年開催された日本心理学会第78回大会(於 同志社大学)でもご報告したように“自分に向き合うことに役立つ”と評価してくださっているユーザーさんが数多くおられます。

◆自分と向き合う時間の豊穣
これまで人類が経験したことのない質・量の情報や地理的制限を超えた人とのつながりを、うまく生かすことで自分の人生を豊かにすることも可能な時代に我々は生きています。可能にするためにまず何が必要か? ー 自分の「軸」をしっかり定めることを“習慣”とすることでしょう。「軸」は時代と共に変化してもいいけれど、その時の自分の「軸」を確認し、常に意識して行動すること。変化に対しては柔軟であるよう心がけるが、ウロウロしすぎないように自分をコントロールすること。

こうしたことができる「私」であるために、「唯一無二である自分に向き合う時間」を確保し、自らの経験に固有の意味を与える作業をしながら、「軸」を丁寧に育て、「軸」を支える自分の在り様を大切に歩みを進める。そんな作業を『孤独力』をもって続けることに「伝版®」が役立てば本当にうれしいと思っています。

理事長 西道広美 拝

*次回は、名古屋で開催された日本心理学会大79回大会からのご報告です。いずれ別の機会に、煩悩満載でありながら『孤独力』を高めるべく、『伝版®ダイアリー』というツールを使って自分に向き合ってきた楽伝メンバーの赤裸々な事例もご紹介していきたいと思います。

2015年9月10日

『好奇心』に好奇心!

コミュニケーション、最初の相手は「自分」

8月27日のブログでご紹介した楽伝合宿で、シンギュラリティ(技術的特異点)が実現するといわれる 近い将来に想いを馳せて以来、『好奇心』ということが気になっています。進化した人工知能で人間の能力を超越する学習能力を持つ機械が“働く”時代には、『好奇心』に触れる活動だけが人間の仕事になっていくのではないか。そんなことを想います。するとつい『好奇心』についてもっと探索したくなり・・・。
今回は『好奇心』に好奇心をもって集ったある場の模様です。

9月のある朝。関東在住の楽伝理事による主催で、『好奇心』をキーワードにしたトライアルミニセッションが始まりました。参加した伝版®ユーザー3名様がおもむろに取り出したのは1枚の伝版®「花」。そこには事前課題の3つのお題《ワクワクしたこと・会いたい人・行きたい場所》についてあれこれと書き込んでありました。花弁や余白を好きなように使って、以前から自覚していたこと、今回のお題を機に思いついたこと、日々のどのような時間に関わることについても、言葉やイラストで表現されています。

伝版®「花」で好奇心探索!
◆自分について言語化するということ
事前課題の取り組み経過を伺ってみると、2週間前のお題発表後、一度まとまった時間をとって「花」に書き込んだものの、その後も伝版®を持ち歩いては幾度となく、ふと思いついて書き足したり、色鉛筆を手に「花」を眺めながら、「ワクワク」の種類や度合いを色分けしてみたり、「行きたい場所」と「会いたい人」との関わりを考えてつないでみたりしていたご様子。伝版®が提供する緩やかなフレームワークを活用し、自分の気持ちを自分にたずねるような「自分と会話する」時間を重ねておられました。こうしてだんだんと、自らの『好奇心』に触れると想定されるキーワードやキーフレーズの“仮説”が、自分にわかる言葉に表現(=言語化)されていきました。

◆「自分にわかる」と「伝える」ことができるようになる
それからのひとときは、事前課題の「花」をテーブルに置き、それぞれに現時点での『好奇心』の“仮説”を語ることに。発信したいことはすでに言語化されていて、伝える準備は整っていました(=自分について理解が深まった状態)。そのため、時折「花」にかきこんだ内容に目を遣ることもありますが、「見て話す」というよりは、「花」で確認済みの、自分のからだの中にあるものをポン、ポーンと外に出し、その響きを聴きながらご自分で確認していくような印象でした。いったん語ってみると(=発信)、受けとめてくれた他者から返ってくるもの(=フィードバック)があり、自分の感情と思考が刺激されて「花」にまた、書き足したくなるのでした(=さらなる言語化)。

◆さらなる探索へ
さて“楽しく”がモットーな楽伝。今回はさらに楽(ラク)に楽しく探索できるアプローチ模索の一環として、参加メンバーの1人社団法人アーツコミュニケーション・ラボ 代表理事・北尾真理子さんの協力を得て、お楽しみワークを用意していました。

3人の方が向き合ったのは、自分で色を選んだ大きな画用紙。テーブルの上のいろいろな色筆記具から好きなものを手にとって、気の向くまま、ぐるぐると描き始めます。ときどき色を替え、筆記具の種類を変え、もういいと思うまで存分に尽くしたところで次へ進みます。

描いた線たちがつくる模様を眺めながら、線と線の間に色を塗ってみたり、何かに見立ててカタチどってみたり。自分に見えたイメージのままに描き足していきます。「スクイグル」といわれるアートを使ったワークです。「スクイグル」には複数の人が交替で線を書き足したり、互いの線図をもとに見立て合ったりなど、実施目的と場に応じたいろいろな手法がありますが、今回のねらいは「自分と会話する」。そこで、ひとりで仕上げていくことにしました。またあえて“左脳の言うことに忠実な利き手”でない方の手を使っていただきました。“いつもとちがう手でかくのがとにかくきもちいい~!”“あたまのこのあたりの中をグルグルかきまぜているような気分です。”と反応はいろいろです。
 
ぐるぐる、スクイグル♪
◆「自信」は「行動」を呼ぶ
さて、仕上がったものは?
思い入れのある場所や、好きな光景が表現されていたり、その方の注意がいま集中しているあるモノばかりがたくさん描かれていたり。語り合ってみると、出てくるのはまさに現在のご自身の『好奇心』の対象でした。先ほどの伝版®「花」を裏打ちするようでもあり、さらに「花」に言葉で書き足したいことも出てきて、自分について表現する言語がより3D化した印象です。
現時点での『好奇心』についての“仮説”に自信を深めた皆さんはそののち勝手に、この秋、ご自分の好奇心をさらに駆動する方法(=仮説検証のすべ)を考えるフェーズへと移っていったのでした。
「自分との会話」で想いを言語化することに始まって、仲間とのやりとりを通じて‟仮説”に自信をもち、今後はいざ行動してみながらの仮説検証へ入ります。いずれ、検証結果を振り返り、軌道修正やその先について考える機会を設け、「好奇心」を駆動させる“らせん状サイクル”をどんどん元気にしていきたいと感じた一日でした。


◆『好奇心』を駆動し、キャリアをひらく
楽伝は人生をひらくための4つの態度と2つのスキルとして『6C(powered by Rakuden)』を提唱しています。『6C(powered by Rakuden)』は、Curiosity(好奇心)、Concern(関心)、Control(コントロール)、Confidence(自信)という4つの態度と、Cooperation(協働)、Conversion(転換)という 2つの行動のセットからなります。『好奇心』は、6Cのスタートに構える『C』です。

午後のアイスブレーキング「マーブリング」
水面から上げる瞬間、意外な文様にワクワク!
『好奇心』とは感情が動く根源的な心。必ずしも明るいものだけでなく、今の生活で気がかりでならないこと等についても含め、喜怒哀楽愛憎といった多様な感情に紐づいています。そうした自分の感情を発露させる対象に触れ、想いを満たし叶える活動(行動)こそが、私たちのキャリアをひらくものへと今後ますますなっていくことでしょう。
 
楽伝は、人の気持ちや考えをひきだし、ひもとき、くみたてることに役立つグラフィック
「伝版®」をはじめ、多様なツールと手法を束ねて活かし、キャリアをひらく力を養う『場』や『方法』をこれからも提供していきます。

次回のブログでは引き続き「自分との会話」に焦点をあて、“孤独に自分と向き合う時間を豊かにすること”についてお届けします。
 
*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性と変化あふれる社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。
 

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