2019年9月12日

英語でコミュニケーションしてみる(岡山県奈義町の取り組み)

小中学生の英語学習意欲醸成に向けた試み~学会発表を終えて

多くの子どもたちにとって、英語で発話することは非日常”です。
文法力や語彙の多い少ないに関わらず、単語だけの発話や1往復で終わるやりとりになったり、伝えたいことがなかったり。また、表現がわからなかったり自信がなくて、沈黙したり。英語を使うことに前向きになれないことは少なくありません。

では、もし実際に英語を使って他の人とコミュニケーションした!という楽しさや自信を一度でも体感したらどうでしょう?

「もっと話したい!」
「今度はもうちょっとちゃんと伝えたい。」
「言ってることをもっとわかりたい。」
そんな「~したい」気持ちがうまれる?!

ひいてはその「~したい」に役立つ知識である英語表現・文法力・語彙を見る目が少しかわり、知識を獲得する意欲や、知識を使う(発話や発信する)意欲、使うスキルを磨く意欲へとつながる

ーそんな学ぶ意欲に刺激となる体験をどのように組み立てるかに我々はこだわってきました。

8月18日(日)早くも秋の空気を感じた弘前大学文京町キャンパス(青森県弘前市)。

楽伝は大会2日目を迎えた全国英語教育学会第45回研究大会にて、今年3月にこうした考えのもと組み立て実施した2時間のワークショップに参加した子どもたちが感じたことを考察し、発表しました。
*『楽伝/らくでん』は特定非営利活動法人楽しく伝える・キャリアをつくるネットワークの愛称です。

当日は小学校から大学まで、様々な教育機関で英語指導をされる教員の方々を中心に、研究者の方、教育行政に関わる方など、25名の先生方がお越しくださいました。 
>発表要旨はコチラ3ページ/8月18日第3室【指導法】⑨)

ワークショップの舞台は?
岡山県の奈義町。JR岡山駅からは車で2h、約2400世帯6,000人が暮らす町です。
海外からも来訪者多いNagi MOCA(ナギ・モカ/奈義現代美術館)や、日本トップクラスの合計特殊出生率2.812014*参考/2013年日本全体:1.43)で知る方も多いでしょうか。
>奈義町 についてはコチラ

中学生を主な対象とするワークショップHave fun! 英語って楽しんじゃけん(^^)/(主催:奈義町教育委員会)』には、町立中学校に通う日本人生徒26名(1年生6名、2年生8名、3年生12名)と町立小学校の日本人児童2名(3年生1名、5年生1名)、あわせて28人が参加。

行はらくでん式英語インプロのファシリテータが主に担当し、町の児童英語指導者の方々や大学生ら日本人5名と、同町の国際交流員であるオーストラリア人1名の計6名の方々が、英語指導の補助と一部ワークの進行を行いました。この方々にはらくでんによる事前研修を実施しました。

> 事前研修の模様はコチラ

プログラムの設計
今回は、実際に身近な仲間と「英語でコミュニケーションしてみる」練習のできる機会に!とのご期待を地域からいただきました。そこでプログラムには、即興演劇の手法(improvisation)も取り入れ、5~15分の短い英語ゲームを重ねる《らくでん式英語インプロ》を採用。
らくでんならではのアプローチとして、英語で日常生活や仕事をしている人々の知見に学び「会話の連続性を支える表現やコミュニケーションスキル」に着目しました。

具体的には下記の点を重視し、<知識の共有>と<英語ゲームを通じた実践>を組み合わせて構成しました。
コミュニケーションの基本作法を学ぶこと・会話の連続性を支える英語応答表現の運用に親しむこと の両方の学習体験を積み重ねる
〇 最終的に、2分間の連続応答を体験する
〇 他者と関わりあいながら学び、振り返る時間をもつ
〇 身近な題材・設定で学ぶ
〇 即興性と遊戯性あるワークで、学ぶことを楽しむ 

カラダを動かしたり、声を出したり力を合わせたり!いろいろな英語ゲームを楽しみ、さいごには、仲間と協力して準備した英語を使って“会話のキャッチボール”にチャレンジです。

子どもたちが感じたこと
開始時と終了時、連続応答やつなぎ表現についてたずね(質問紙調査形式)、事前事後を比較考察しました。
2分間連続応答をした経験がある」のは、開始時は回答者の20%でしたが、終了時63%に増加
英語での応答で自分が使えるつなぎ表現がある」との回答は、開始時24%から終了時67%に増加
*今後について「もし英語で会話のキャッチボールをするとしたらできそうか」と5段階スケールでの質問には、「できそう」との回答は開始時・終了時とも2名で変わらないものの、「ややできそう」との回答は、開始時3名から終了時15名(回答者の56%)に増加
*2時間の体験全体については、約9割の子どもたちが「楽しかった(48%)」又は「やや楽しかった(42%)」と回答 

学会発表を終えて
学会ではワークショップでの英語ゲームやワークに多くのご関心をいただきました。
また、英語そのものから一歩立ち戻り、「コミュニケーションの基本作法を重視すること」を新鮮に感じるとともに共感もいただいたようです。

そのほか、多様性を活かすコミュニケーションプログラムととらえ、日本在住の日本語・英語以外を母語とする子どもたちのためのワークショップの可能性や、多様な背景をもつ子ども・大人のためのプログラムの可能性についてのご期待や助言など、さまざまな知見をいただきました。

ご関心を多くいただいた点については、さまざまな子どもたちの「やりたい!」のきっかけづくりに役立つよりよいご紹介の方法も含め、今後検討していくつもりです。

子どもたちのその後
ところで、2時間という枠内で、2分間の応答までをゴールとしたこのプログラム。
楽しいだけで終わらない!持っている知識や今日身につけた知識を実際に使うために汗もかいた子どもたちでした。
どんなチャレンジも承認される場で、学齢を超えた仲間と遊戯性あるワークを交えてチャレンジしたからこそがんばれたことでしょう。

ワークショップから約5か月
その後も奈義町で子どもたちと向き合う児童英語指導者の方からは、子どもたちがチャレンジした過程で自信を高め、意欲を言葉で語るようになっていること、あの場での応答の完成度に関らず英語に前向きな気持ちになったことなどを伺っています。

それでは最後に、子どもたちのコメントをご紹介します。
 ・楽しかった。ニセモノ紹介クイズは友達同士で簡単にできるのでまたやりたい。
 ・あいづちをするのにもいろいろあるってわかった!
 ・いくつもの表現を覚えて帰れた。ふだんもつかってみたい。
 ・なんか、すごくしゃべった!
 ・英語が苦手でも、英語ができた気になった。
 ・ペアで言葉のキャッチボールができた。会話をつなげる言葉がわかった。
 ・つなぎ表現のわかる数が少しふえた!楽しかった。
 ・英語での会話が、前よりも積極的にできてたのしかった。
 ・今度は実際に外で外国人としゃべってみたい。
 ・もっともっと話せるようになりたいと思うようになった!
 ・またやりたい!
楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性と変化あふれる社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。


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