2018年1月6日

年始のごあいさつ

新年あけましておめでとうございます。
 
人の血管をつなげば余裕で到達?
「マナケウア山4205メートル」から見た夕日
年末年始は 生活の中でことさらに「数」を意識させられます。新しい年まであと何日 というカウントダウンから始まり、年が明けたら三が日、おせちの中身は奇数、黒豆は年の数だけ食べる等々、数字があちこちに顔を出します。
 
違う視点から人間に関する数字を探しておりましたら、こんな数字に出会いました。

人間の血管をつなぐと、その長さはおよそ10万キロ。これは地球を約2周半できる長さです。そして、言うまでもなく人体のネットワークの要である、その血管ネットワークも、生体イメージング技術の進化により、血管を通る物質を通して常にやりとりされている臓器同士の「会話」が紐解かれつつあります。巨大ネットワークから成る人体について明かされた科学的な事実が年始のテレビで紹介されており、興味深く見ておりました。

ところで、昨年2017年の楽伝は、グローバル社会を生き抜くツールとして英語にフォーカスしました。そしてコミュニケーションにおけるコトバ偏重を越え、カラダ全体を使って行うことの重要性に注目し、即興演劇の手法であるインプロビゼーションを用いた英語のワークショップを本格的に始めました。
言ってみれば、コミュニケーションにおける「頭でっかち」スタンスを離れて、英語というコトバだけれども コトバ「だけじゃない」在り様のコミュニケーションを「英語のインプロビゼーション」という形式で模索したのです。

相手がどのような背景のどのような人であっても、その相手に伝えたいという気持ち、それを表現しようと試行錯誤する勇気、創意工夫の過程で身体全体からにじみ出る個性、動き・音・形・色・大きさ等々、コミュニケーションにおける「丸ごと」感を大切にしたい、と考えた末に生まれたひとつのチャレンジです。 

ほんの少し前までは、「脳」を司令塔とするトップダウンの人間観が幅を利かせていました。しかし徐々に明らかになってきたのは 人間が脳だけの指令で存在しているのではなく、臓器同士のコミュニケーションを通して生命を成り立たせている、というダイナミックな相互作用の姿でした。
これは、人間が、一極集中ではなく多元的なネットワークで成り立っているのだといういわば、人間観についてのパラダイムシフトとも言えましょう。
 
団体の設立以来、楽伝は一貫して「個」を重視するスタンスですが、上のパラダイムシフトを当てはめると、その「個」というコトバで表される一人の人間は、司令塔に支配される存在なのではなく、相互依存的な巨大ネットワークそのものだったのだ、と表現することができます。

さて、巨大ネットワークと言えば頭に浮かぶのは人体ではなく、ITAIなどの先端技術でしょう。特に情報を蓄積して日々進化し、課題解決に資するAIはどんどん生活に入り込んでいます。「AIに人間は仕事を奪われる」という悲観論が幅をきかせている節もあります。しかし、AIができること、ではなく、AIができないことに注目すると希望がありそうです。

AIにできないことは「動機を生ずる」こと。AIは 課題を設定されればその解決方法を見出すことはできるが、課題を見つけようとする「動機」がないのです。

人という「個」が「動機を生じさせる巨大ネットワーク」なのだということを認識すれば、AIを殊更に恐れずとも、素直に「個」の可能性を追求されてしかるべきだ、と感じます。そしてさらに「個」である人と人同士が つながり、地域を越えて、人種や性別を越えて他者と協働することは、「動機を生じさせる巨大ネットワーク」同士の交流とも言い替えられます。その交流によって生まれるポテンシャルを明確にそして常に意識すれば、人はもっと素晴らしいことができるに違いありません。

「動機を生じさせる巨大なネットワーク」である「個」の存在をより意識して、「個」と「個」の掛け算にチャレンジする、英語インプロはそのチャレンジの表現型。小さな団体の小さな試みですが、いいんじゃないかと思っています。このちっぽけな身体の中を縦横無尽にかけめぐって、何かを伝えたり、運んだりしている巨大ネットワークの一つである血管をつなげると、およそ10万キロなのですから。 

昨年本格的に開発・実施されたこのプログラム。今年もさまざまな地域で多様な人々と、英語インプロを通じて交流をしたいと思っています。私とは異なる「動機を生じさせる巨大ネットワーク」を持つ皆様とどこかでお会いできますよう。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

理事長 西道広美 拝

*写真撮影:らくでん社会教育部 辻野恵美子


 

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