2018年12月21日

変化の時代、なぜいま英語インプロか

“繋がるためのスキル”をコミュニティで育む

師走の半ば、今年も訪ねた“ATD*ジャパンサミット”のテーマは“Creating a Future-Ready Learning Culture(未来に備える学習文化の醸成)”。変化し続ける時代をふまえ、組織の戦略的目標の実現に向けた“学びの変化”の重要性とそのグローバルでの先端ナレッジを共有する場となりました。

個人の学びを、多様な個人それぞれに応じる方法で促進するHRテクノロジーや、他者との関わりや体験の中に学びを得ることも含め、多様な学び方を統合する学習の捉え方への知見も共有されました。
*ATD(The Association for Talent Development): 120か国以上に会員を持つ、人材開発の領域で世界最大級の組織。日本では4年前から人財開発・組織開発の分野でのグローバル先端ナレッジと事例を共有するコンファレンス「ATDジャパンサミット」を開催。内外の人材開発プロフェッショナルを講師に、変化し続ける時代を前提に、新たなHRテクノロジーや組織の事例が共有される場。

◆HOWの育成に必要な非認知的スキル
1年の終わりに“ATDジャパンサミット”に身を置くことは、自分たちの現在地を感じる機会であり、次の一年のフォーカスを確認するひとときとなっています。ATD プレジデント兼CEOTony Bingham氏は、時代の変化が人々のキャリア開発と組織開発に与える影響を例示して参加者と共有した上で、変化を予測する必要性を認めつつも、「WHAT(完全予測は不能な“これからどのような変化が起きるか”)」より「HOW(変化に直面したときにどのように対応・適応するか)」がキーであることを丁寧に語られました。適応し生き抜いていくためのHOWの創意工夫・スキル開発マネジメントが組織単位・個人単位でますます重要になっていることを、Bingham氏のメッセージにもあらためて確認しました。
 
スキルといってもその幅は広く、変化に対応・適応する際に必要なスキルは、認知的なスキルと社会情動的なもの ―これはいわゆる「非認知的スキル」として最近脚光を浴びているものですが― に概念的に分けられますが、重要なことは両者の相互補完的な関係性です。
ところで、この両スキルの相互補完性がうまくブレンドされている形について思いをはせると、つい先日、岡山県の奈義町で開かれた『らくでん式英語インプロ』のワークショップの模様が思い起こされました。

◆人と繋がることで変化に対応する
個人が変化に適応すべく自らのスキル領域を広げることが必要な一方、個々人が努力するばかりでは変化に対応しきれません。

変化激しい時代を生き抜く力とは、変化のただ中で自分と同じ場に居合わせた「背景の異なる多様な他者と即興的につながり、協働できる力」。― このような非認知的スキルを養う機会を、だれもが楽しく身近なものにできることを願い、楽伝は“遊んで身につく、即興英語ワークショップ”である『らくでん式英語インプロ』を開発・展開してきました。

◆長い時代を経てきた演劇の資産を活かして英語を学ぶことの意味
インプロ(improvisation/インプロビゼーション)とは、そもそも演劇に由来する、台本の無いパフォーマンス(即興演技)。既成概念にとらわれず、予測し得ないその場の状況・相手にすばやく応じ、今の瞬間をいきいきと生きながら、複数のメンバーと共通のストーリーをつくっていくこと、またその力をさします。つまり、インプロとは非認知的スキルそのもの、およびそのトレーニングであるといえます。

演劇界においてエチュードとして長い歴史をもち、さまざまなフィールドで磨かれてきた「インプロビゼーション(即興演技)」の手法に力を借りることで非認知的スキルを育み、一方で“英語”という「外国語(自分のものとは異なる文化・価値観・習慣を内包した言語)」を認知的なスキルとしての自らのツールにする。
―  らくでん式英語インプロのプログラムは、こうした《英語xインプロ》のフレームワークの中で進みますが、それゆえ認知的スキルと非認知的スキルを相互補完的に育成する場となります。

『背景の異なる他者とコミュニケーションする(=即興的に伝え合う)』場面を仮設定し、やってみることのできる体験として提供することで、参加者は、日常の不安感(羞恥心や評価への恐れ)と自分を“切り離し”、失敗を恐れず安全にチャレンジすることが可能になります。これは認知的スキルと非認知的スキルが相互補完的に作用しあった結果であるといえましょう。

◆コミュニティが内外と繋がる幅広いスキルを育む
完全予測は不能な時代だからこそ“不確かな、複雑で曖昧な、混沌とした状況に対する適応力”を育めるか否かは、その組織の持続可能性に直結してくる ― それは冒頭にふれた“ATD*ジャパンサミット”に多く来場されていた「企業」という組織ではもちろんですが、地域という社会組織である「コミュニティ」においても同様です。

これまでの時代を支えてきて今を担う住民層と、この先の時代を支える子どもや若者、新たな住民や滞在者たちが、自らの意思を多様な人々に伝えるために不可欠な即興性を伴う表現力”をともに体験を通じて育むことは、コミュニティがその魅力を内外に発信し、都市もとびこえ外部とつながり、選ばれ、生き残る存在となる力になることでしょう。

昨年度から関わらせていただいているコミュニティ・奈義町(岡山県勝田郡)では、まさにそうした時代の変化を見通した“学びを育む”試みに『英語インプロ』を道具として活用いただいています。 
地域に“伝え合う力”が根を伸ばす仕掛けとなるべく、ワークショップの位置づけを吟味しながら、コミュニティの子供たちが“背景の異なる他者とコミュニケーションする力”を持続可能な形で育めるよう、地域人材の育成も含め、取り組みが進んでいます。

つい先日開催された3回目のワークショップではいよいよコミュニティの方々が、参加者としてのみならず、ワークショップの進行役として参画されました。その模様は、1月中旬にお届け予定です。どうぞお楽しみに!

◎お知らせ◎
20181228日(木)より201916日(日)まで、年末年始のお休みをいただきます。

 
楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性と変化あふれる社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。



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