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急勾配を行く登山電車 出典:Vesuvioinrete.it |
皆様はどんな新年を迎えられましたか?
今年は元旦から何か新しいことを、ということで、ザ・シンフォニーホールで開催されたニューイヤーコンサートに行ってまいりました。
オペラ・ミュージカル・バレエなどの演目からピックアップされたイタリア・ドイツ・フランスの楽曲は、新年を迎えた独特の高揚感にぴったり。
歌の進行と同時に、バックに歌詞が映し出され、メロディはお馴染みでも「この名曲はこういう意味だったのか」という新鮮な驚きを感じることができました。
その中から、一曲の誕生物語を。
日本では“おに~のパンツはいいパンツ! つよいぞ~つよいぞ~♪”の歌いだしで知られる「鬼のパンツ」の歌は、イタリア歌曲の「フニクリ・フニクラ」が原曲です。
なんとこの曲は、イタリアのヴェスヴィオ火山の頂まで観光客を運ぶ登山電車「フニコラーレ/Funicolare」のテーマソング♪
1880年に敷設されたこの電車はなかなかの急勾配を登るもの(冒頭の写真)。当時の人たちの中には恐怖を感じる人も少なくなかったのでしょう。当初は全く人気がなく、困った運営会社はルイジ・デンツァに作曲を依頼しました。そして出来上がったのが「フニクリ・フニクラ」だったそうです。
世界最古のコマーシャルソングともいわれる「フニクリ・フニクラ」。ちなみに、この日紹介された歌詞は「鬼のパンツ」に通じる勇ましい内容で、なんだか元気が出てきます。
♪ 昨日の晩、すごい物に乗ったんだ
♪ こんな気持ち初めてだよ
♪ 火の吹く山へひとっ飛び
♪ 怖くて逃げても大丈夫
♪ 疲れ知らずで景色を楽しもう!
♪ さあ行こう!行こう!
♪ フニクリ・フニクラ
ご存じ「鬼のパンツ」のメロディにこの歌詞がのるわけです。
なんだか急勾配を行く「フニコラーレ」に乗ってみたくなりませんか。人の態度と行動を変えるマーケティングの勝利?といえましょうか。たいしたコマーシャルソングですよね。“恐怖を感じる急勾配”を“楽しいもの”に変えてしまうのですから。
ふと考えてみれば、「怖い」と思う心は、誰かからもたらされるのではなく、自分の中から湧いてくるもの。急勾配を行く「フニコラーレ」そのものは、この歌があってもなくても何も変わらない。
変わったのは、自分の「心」。
敵に出くわしたら、そいつは僕らだった
- フォルト・ケリーの漫画『ポゴ』より

清々しい気持ちの一方で、ノンストップの変化に見舞われることを想像すると何とも言えない不安が沸き起こってくるのも事実。不安を恐怖ではなく、まだ見ぬ景色を疲れ知らずに楽しむような期待感に変えるには、「心」へのちょっとした働きかけがいりますね。「敵を僕ら」にしないためにも。
元旦のコンサート2時間余り、すっかり楽しみましたが、さらにおみやげとして「鬼のパンツ」、いえいえ「フニクリ・フニクラ」 !
今年の自分応援ソングにしてしまおうと思っています。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
理事長 西道 広美 拝