2022年3月16日

伝版®と共に、コロナ禍の2年間。

 <伝版®ことはじめ>

もしかしたら、これを読んでくださる方の中には「伝版®」のことをご存じない方もいらっしゃるかもしれないので、伝版®について軽く振り返っておきます。よくご存じの方は<伝版®ことはじめ>、どうぞ読み飛ばしてくださいね。

「伝版®」とは、人の気持ちや考えをひきだし、ひもとき、くみたてるために開発されたファシリテーションのためのグラフィックツールのこと。

ある目的に向かって進む人あるいは人々をナビゲーションするファシリテーションは、その水先案内の道中で、進行を当意即妙に変える柔軟性を求められるため、不測の事態に対応する余力も含め、結果的に多大なエネルギーを要します。人をコトバだけで動かすというのは本当に難しいということを、ファシリテーションの現場に立つたびに毎度思い知らされます。

ファシリテータは、水先案内がスムーズにできるように、その「場のエネルギー」を循環させ続けることも大切な仕事の一つなので、自分自身が消耗してしまうとファシリテーションは務まりません。これを避けるために、息の合った複数のファシリテータが連携して進行することにより、途切れなく場のエネルギーを循環させることはできます。が、複数のファシリテータが呼吸を合わせて進行するには、緊密な連携が必要ですし、クライアントサイドから言えば、複数のファシリテータに依頼するとコストアップにつながります。結果的に現実場面では、1人でファシリテーションを担当しなければならない場面が多くなります。

というわけで、ファシリテータが一人であっても、進行をサポートしつつ、場のエネルギーの循環をスムーズにするツールを作りたい、という狙いもあり、伝版®を開発しました。

実際、伝版®のヘルプを借りてみると、ほぼ間違いなくファシリテータに余裕が生まれます。この余裕は、不測の事態への対応と、持続的な場のエネルギー循環を可能にします。これは伝版®のグラフィックに組み込まれたメタファーの働きによるものです。メタファーの力を借りると、ファシリテータによる少しのインストラクションを添えるだけで、相手は自分自身の気持ちや考えの探索に、スムーズにとりかかることができるというわけです。

で、「誰」をファシリテートするのかというと、すぐに思い浮かぶのは、「他者」。プロのファシリテータは自分ではない「他者」をファシリテートしてこそ「なりわい」を成立させます。これまで、商品開発、組織開発、あるいはキャリア開発の場面で、プロのファシリテータとしての役割を担うことも多かった私は、「他者(一人でもグループでも)」の可能性を拓く際に、伝版®を大いに活用し、その有効性を実感し続けています。


さて。

人生の中でファシリテートする対象としてまず重要なのは当然ながら「他者」ではなく、「自分」。私は、自分で自分をファシリテートできることが自分の人生を生きるための最重要スキルなのだと考えます。

なぜなら、

自由意志で生きられるこの世界に存在する自分の人生は一度だけ。

自由が尊重される時代と場所に存在できること自体、非常に幸運なことですが、その貴重さを存分に生かすためには、自分の人生を自分でファシリテートできることが必要です。さらに言えば、それさえもできずに、そもそも「他者」をファシリテートなどできるのだろうか?といういささか厳しい問いさえ立ち上がります。

そんな気づきが同時多発的に生じたのか、私と共に伝版®を愛用していたファシリテータたちが、伝版®を日常的に自己ファシリテートするためにダイアリー仕立てにすることを提案してくれました。

というわけで、伝版®ダイアリー誕生以降の10年間、伝版®が生まれた当初は想定していなかった日々の自己ファシリテートのツールとして伝版®ダイアリーを使い続けてきました。長年のユーザーさんも、それぞれのスタイルで自己ファシリテートしながら、愛用してくださっているようです。


<コロナ禍と自分のためのファシリテーション>

さて、コロナ禍に見舞われ、誰もが思ってもみなかった約2年。今後もどうなるかは不明ながら、2022年3月の今、ワクチンを含め、日々の対処にも慣れ、ウイズコロナの生活スタイル含め、落ち着きが増してきたように思えます。ただこの間に、さまざまな変化に見舞われ、心理的・経済的・肉体的に辛い思いをした方も多く、思うような出口が見えない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここで、敢えて問うてみたいと思います。

果たして、期待通りの出口なんてあるのだろうか、と。

確かに出口らしきものはあるでしょう。ただ、望み描くそのままのたった一つの輝かしい出口ではなく、出口らしきオプションに薄日が差して見え隠れするような状態が続くのかもしれません。それを探りながら進んでいく。出口に対する期待と行動ってこんな感じのあやふやなものなのだと認識を変えることも大切な気がします。

この2年、皆さんの多くがそうであったように私自身も生活や仕事の仕方を大きく変えることになり、それなりの肚決めとチャレンジをすることになりました。仕事が延期になる、キャンセルになる、規模が縮小される、リモートになり、リアルでの実効性が会社として確認されている既存のノウハウが使えなくなったので、新たに対応する・創り出す必要がある、などなど。極小の会社であるがゆえに、できることなんか限られているような気もして、緊急事態宣言が出た2020年4月あたりは本当に、「ぽかん」という感じでした。

この「ぽかん」状態から、自らを「深耕」しつつ、底に埋もれていたものの探索と取捨選択を経て、新たなチャレンジを始めている最近まで、私の伝版®ダイアリーの記載をざっと振り返りながら、この価値をお伝えしたいと思います。

とはいうものの、そもそも私のありようが皆さんにどれぐらい参考になるかわかりませんので、その手掛かりをご提供するためにも、私自身について記述しておこうと思います。

「ぽかん」から目覚めつつある私は、今年で還暦を迎えます。まさに、もう一度オギャーと生まれて生き直すことがぴったりな年齢。社会人歴は今年33年目、新卒➡国内出版社で編集者➡外資系日用品企業に転職、調査業務(この間に結婚)➡国内シンクタンクに転職、調査・マーケティング業務(この間に出産)➡「株式会社伝耕」起業(2009年~、現在も継続中)➡このサイトのNPO開始(2012年~現在も継続中)。

私は男女雇用機会均等法世代ですが、正社員で総合職として社会人を始め、その後も正社員として転職を経験し、結婚し子供を産み、さらに起業して13年会社を続けているというのも、かなりの「レアもの」のようです。試しに統計数値を興味本位で見てみると、2021年4月帝国データバンクよれば、女性社長率は8.1%、業歴別にみると伝耕があてはまる業歴「10~19年」は9.5%らしいので、起業していて、業歴が同じぐらいの人を探すだけでも出現率は0.8%。さらに類似したキャリアの仲間を探そうとするともう無理。「希少種」を越えて、「種」なんか形成できるほど人数がいるのか?というほど「ぼっち」な感じです。

ということで、結果的に希少種(まだ見ぬ仲間はいることにしておきましょう)となってしまった私の伝版®ダイアリーは、会社起業後から今までのチャレンジの記録です。希少種として参考になるような似通った経歴の方は少ないので、迷いだらけの「悪戦苦闘」続きでしたが、そこにコロナ禍。これによって、さらに自己ファシリテーションの必要性が問われた気がしますが、それはとことん孤独と向き合うことを意味するので、辛く感じた方も少なくないかもしれません。そんな方へのエールになればと思っています。

コロナ前の数年間は、国内外含め、各月平均15日程度もあった出張がいきなり無くなりました。皆さんもそうされていたように家に引きこもり、そして月々のスケジュールがいきなりオープンに。というわけで、身体は楽ちんでしたが、世間から必要とされず、これからも必要とされないような気がして、気持ちは空虚。その、とまどいが表れているのが、2020年4月の伝版®(下記)。

「迷う」と花芯に書かれています。まさに、そのまんま。スケジュール欄は月半ばまでほとんど真っ白。楽しみにしていた赤穂の温泉行きもキャンセル(その後、ちゃんとリベンジ済)。忙しいのが日常だったのに、いきなり「ピタっと」止まる。真っ白なスケジュールを見つめながら、毎日花の「伝版®」を見つめて考えあぐねておりました。

そして、花芯の外側6枚の内側の花びらの中に書かれている「学・沈・微・静・動・深」、何の呪文かと思いますが、「微細な内容について、深くもぐりこんで静かに学ぶ」という意味あいの活動をするというイメージで書いたものです。これまでの伝版®ダイアリーをよく見返したいたのもこの頃です。
そして、翌5月の花、こんなことが書かれています。












←西道私物、20205月の伝版®ダイアリー 物騒なタイトル。


どうやら私、変わろうと決心したみたいです。「破壊しつくす」、まさに、破壊の神様であるシヴァ神になった気分。破壊の相手は自分自身。そして、「吟・待・冷・止・黙・捨」という新たな呪文。「自分のこれまでの在り方を吟味して、浮上するものを待ち、熱しすぎたものを冷し、動きを止め、黙殺する」。ほとんど自作自演のホラーですね。まあともかくも何が大切で何がいらないのか、抑圧していたものは何なのか、解き放つものは何なのか、ということについて日々考えていた記憶があります。

以降、2020年6月~2021年3月、花芯にはこんなことが書かれていました。

2020年
  6月 厳選
  7月 人と組織を育てる
  8月 中期任せる
  9月 仕込み
    10月  次の2年
    11月 存在と価値
    12月 乱世の愉悦
2021年
   1月  瞬間と凝縮
   2月 溶解と学び
   3月 春を待つ

花芯には、アクションの方向性を書いたり(例:「人と組織を育てる」等)、フォーカスすべき概念(例:「存在と価値」等)を書いたり、具象と抽象を行き来しているのがわかります。それにしても、2020年12月、「乱世の愉悦」ってなんでしょうね。優等生的なアクションも奏功しないことがわかり、しっちゃかめっちゃか具合がなぜかやたらに楽しくなってきたことを覚えています。で、スケジュールに「乱世の愉悦」の内容がそのまんま反映されているとそうとは限らず。辛いことがあった時は「乱世の愉悦」と唱えているだけ、あとは突発的に普段は見ない映画を観たりして。ただ、一つ言えることは、毎月の花に書かれている内容のおかげで、ゆらゆら揺れがちな気持ちを折々に束ねる効果は絶大で、私の精神を守ってくれました。そして2021年に入ってからは少しポジティブな気持ちが高まってきて、今までやっていなかったことをやろうとしてあれこれ画策をはじめました。

そして、2021年の4月はこちら。


このあたりで、チャレンジの方向性が明確に。スケジュールが埋まるか埋まらないかなんかは、もうどうでもよくなり、前を見ること自体が楽しくなってきたのです。2月頃から新たな取り組みをこれまでとは異なるメンバーと開始し、わからないことばかりだけれど、調べ、助けを求め、進んでみて、楽しみが増えてきた。いまだ出口は見えない、が、出口を自らつくりだすという気持ちで取り組みはじめたのです。

2021年4月以降、こうしようと決めた、これまでの私と異なる点は、後方支援に徹すること。現場・前線好きな私としてはなかなかのチャレンジですが、これまでとはものの見え方、捉え方が異なります。そうなると、出口のオプションもこれまでとは違ってくるわけで。まあ、これからはいい意味でrolling stone、ころころ転がって、思ってもみない出口にたどり着くのかもしれません。

常にポジティブな気持ちで変化を受け入れることができればよいのでしょうが、そんな強靭な人は少ないのでは?私も強靭とは言えない一人です。でも、心の揺れを束ねる表現を毎月、伝版®に託して、それを見つめて、月の前後を見比べて考えることができたからこそ、俯瞰して見えてきたこと、それをもとにプランしてみたこと、考え直したこと、行動してみたこと、が積み重なって、今の自分を支えることができているのだと思います。特に、自分で自分の仕事を創造しなくてはならないような立場にある人には、自己ファシリテーションを容易にするツールがあることは本当に助けになるのです

さて、そんなこんなで、手元にある新しい2022年度版の伝版®ダイアリー、4月の伝版®、まんなかの花芯を、今日、埋めてみました。

「ぼうけん」

漢字の「冒険」ではなく。ひらがなの「ぼうけん」。知らないことばかりに出会うことを前提に、新たなメンバーとまだ見ぬ出口を探しに行く旅にでることを楽しむイメージです。花弁は「ぼうけん」を手掛かりに、4月までに、日々、考えを巡らしてみるつもりです。










←西道私物、20224月の伝版®ダイアリー これから花びらを埋める。

さて、みなさんなら、どんな言葉を4月の花芯に入れますか?

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ここまで長々とお読みいただいてありがとうございました。

下記に伝版®ダイアリーのお求めについて再掲しておきます。必要であれば、書き方や活用法の例について、リモートでよろしければ、私がご説明いたします。ご説明が必要であれば、その旨もお知らせください。


<伝版®ダイアリーのお求めについて>
すでに2022年度版のご予約を頂いている方は、こちらからご連絡させていただきます。新たに伝版®ダイアリーをお求めの方は下記の要領でお申し込みください。3月中旬からの発送を予定しております。売り切れの際はご容赦くださいませ。

◆2022年度版 仕様
 ・4月始まりの年度版ダイアリー(2022年4月~2023年4月)
 ・A5サイズ ・クリアカバー装着
 ・予定価格:3,300円(税込)+送料(370円) *4冊以上は送料520円

◆申込方法
 下記のいずれかよりご連絡ください。
 30部限定・先着順。部数に達し次第、受付を終了します。

 Mail: info@rakuden.or.jp
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